手取りを増やしたいなら「信託報酬」に注目せよ

投資信託を選ぶポイントを解説しましょう。インデックスファンドであれば、投資信託の規模を表す「純資産総額」と、価格を表す「基準価額」がともに右肩上がりで上昇していることが大切です。2つが右肩上がりであれば、投資家からの人気が高く、順調に資金流入していることを示します。信託報酬が低いことも重要です。同じ指数に連動するインデックスファンドの場合、運用パフォーマンスに大差はないですから、信託報酬の差が利益の差に直結してきます。分散投資効果を高めたいならば、投資先はできるだけ多く、市場全体をカバーできるもののほうがベターです。たとえば日本株の場合、日経平均株価は225銘柄が対象ですが、TOPIXは約2150銘柄が対象ですから、TOPIXのほうが株式市場カバー率が高いといえます。

トラッキングエラーもチェックしましょう。これは対象とする指数(ベンチマーク)と投資信託の値動きがどれくらい連動しているかを見ます。指数との差が少ないほどトラッキングエラーが小さいことを意味します。

アクティブファンドを選ぶときには、何よりもリターンを重視します。前述のように運用成績でインデックスファンドに勝てるアクティブファンドは、わずかです。インデックスファンドより信託報酬が高い分、それを上回るリターンが得られているかが重要です。少なくとも3年、できれば5年、10年の長い期間での運用成績を確認して、順調に上昇しているものを選びましょう。資金流出入額も確認し、順調に資金が流入している商品を選びましょう。シャープレシオも重要です。これはリスクとリターンの関係を表す指標で、数値が高いほど、同程度のリスクをとって得られたリターンが高いことを表します。言い換えれば効率よく収益が得られたことになります。

リスク許容度(「自分が損にどれくらい耐えられるか」を示した度合い)が高く、リターン重視で運用したい人には、全世界株式に投資するインデックスファンドが一つの選択肢です。特に「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー。以下、オルカン)」は人気です。同じように全世界株式に投資するインデックスファンドには、楽天・全世界株式インデックス・ファンド、SBI・全世界株式インデックス・ファンドなどがあります。これらの商品の違いは、主に連動する指数です。

オルカンは、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(以下、MSCI)への連動を目指しています。この指数は世界23の先進国・24の新興国の株式で構成されています。先進国が約9割、新興国が約1割です。国別に見ると、米国が最も高く全体の約6割を占めます。楽天とSBIは、FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス(以下、FTSE)への連動を目指しています。この指数は、25の先進国と24の新興国の株式で構成されていますのでMSCIと大きくは変わりません。米国の組み入れ比率も約6割とほぼ変わりません。違いは小型株を含むかどうかと世界株式市場カバー率です。

MSCIは小型株が対象外ですが、FTSEは小型株も対象としています。組み入れ銘柄数で見ると、MSCIが約3000銘柄、FTSEが約1万銘柄です。この差が世界株式市場カバー率に影響し、MSCIが約85%であるのに対し、FTSEは約98%です。分散投資効果が高いのはFTSEといえそうですが、指数のリスク・リターンに大差はなく、気にしなくてもOKです。リターンを見ると、直近3年と5年ではMSCIのほうが良いですが、期間によってFTSEのほうが良い場合もありますので、ほぼ変わらないと考えていいでしょう。

細かい部分では、指数に連動させる仕組みにも違いがあります。オルカンは、投資家の資金がベビーファンドを通じ、自社で設定した3つのマザーファンドを挟んで、日本を除く先進国株式等、新興国の株式等、日本の株式等に投資されています。楽天とSBIも投資家の資金はベビーファンドとマザーファンドを経由しますが、最終的にはETFを通じて、全世界の株式に投資しています。オルカンのように自社でマザーファンドを設定したほうがコストを低く抑えられるメリットがありますが、ETFに投資をしたほうが簡単に商品設計ができるメリットがあります。ただ、個人投資家が商品を選ぶ際には、連動の仕組みまで細かく気にする必要はありません。前述のポイントを押さえておけば問題ないでしょう。

また、オルカンと同様に、MSCIへの連動を目指す商品に「楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド」があります。信託報酬は年0.0561%でオルカンより低くなっていて、本稿執筆時点で最安です。楽天証券を利用している人は、残高の年0.017%のポイント還元があるので有利です。

オルカンは投資家にとても人気があります。理由は、いち早く低コスト化したこと、業界最低水準の運用コストを標ひょう榜ぼうしていること、純資産総額が増えるほど投資家が実質負担する信託報酬が減る仕組み「受益者還元型信託報酬」を採用していることなどからです。

長期・積立投資なら暴落がチャンスに変わる

積立投資を始めた後は、年に一度運用状況をチェックすればOKです。大きなニュースがあったときにどれくらい値動きがあるのかを把握しておくのも一つです。通常時は問題ないですが、暴落など大きな値下がりがあった場合は売ったほうがよいのでしょうか。今年8月上旬、日経平均株価が「ブラックマンデー」を超える過去最大の下落幅となりました。そのような大暴落のときでも、積立投資をストップしたり売ったりすることは決してしないほうがよいでしょう。

まず、これまで値下がりし続けた相場はなく、概ね1~3年、長くて5年で回復し、その後上昇に転じています。今後も世界人口の増大に伴い、世界経済は成長を続けていきます。それに合わせて株価水準も今よりも上昇していく可能性が非常に高いです。

値下がったときに売ってしまうと、その後に値上がりしたときに資産が回復せず、大きく資産を減らしてしまいます。積立投資を続けていれば、前述のドル・コスト平均法によって、値下がりをむしろチャンスに変えることができます。時間を味方にした積立投資の継続こそ、暴落をカバーできる有力手段です。