「長期・積立・分散」が堅実に増やす鍵

では、新NISAを活用して積立投資を実践した場合、お金を実際にどのくらい増やすことができるのでしょうか。

仮に毎月3万円を20年間投資した場合、運用利回りが5%であれば1233万円になります。投資元本は720万円ですから1.7倍程度に増える計算です。新NISAに出遅れた人は、いますぐ始めて物価上昇に負けない資産をつくりましょう。

とはいえ、期待リターンが高い資産クラスほど、リスク(値動き)も高くなります。お金を減らさず増やしていくためには「長期・積立・分散」を意識することが大切です。過去のデータを検証すると、投資期間を長期にすることで元本割れのリスクを抑える効果があります。また、積立投資で一定額ずつ購入することで、価格が高いときには少しだけ買い、価格が安いときにはたくさん買うことができ、結果的に平均購入単価を抑えることになります(これを「ドル・コスト平均法」といいます)。暴落や下落相場をチャンスに変えることができることを意味しています。さらに、投資先を分散することで値動きを抑えることも可能です。

10年、20年と投資を続けていくためには、モチベーションを維持するための工夫も必要です。また、「できるだけお金を増やしたい」という漠然とした目標では、どんなにお金が増えても達成感が得られません。そこで、投資を始める前には目標を立てることが大事です。たとえば、「定年後に年に1回は海外旅行がしたい」「子供の大学資金を準備したい」など、何のためにお金が必要なのか、具体的な使い道を設定することで、投資を継続するモチベーションが維持できます。また、「いつまでに」「いくら」必要かも具体的にしておきましょう。ゴールを設定して、そこから逆算することで毎月の積立額や利回りの設定が明確になります。投資で失敗する最大の原因は「途中でやめてしまう」こと。ゴールを明確にして、目先の損得に一喜一憂せずに取り組みましょう。

資産配分(ポートフォリオ)も運用成績に大きな影響を及ぼします。資産配分は、お弁当のおかずのバランスに似ています。お肉だけ、野菜だけに偏っていては栄養バランスが整っているとはいえません。投資も一つの投資先にお金を集中させてしまうと、値下がりリスクが大きくなってしまいます。適度に投資先を分散させつつ、自分の投資スタイルに合わせて、それぞれの投資先の比重を変えていくことも意識しましょう。資産配分をどう決めればいいか、迷う場合にはプロの資産配分を参考にするのもいいでしょう。たとえば、GPIFは現在、国内・外国の株式と債券に25%ずつ均等に分散投資しています。2001~23年度の収益率は年平均4.36%でした。

実際に新NISAを利用して投資をする際に、相性がいい商品は「投資信託」です。投資信託は、ファンドマネジャーと呼ばれるプロに運用をお任せできる商品です。投資家は資産のタイプや投資地域を選ぶだけで、自分に合ったポートフォリオをつくれます。投資信託を選ぶ際に注意が必要なのは、コストです。投資信託には「信託報酬」と呼ばれる運用コストがかかります。投資信託を保有している間は、毎日発生しますから、わずかな差が大きな差になります。信託報酬は投資信託のタイプによっても異なりますが、同じタイプのものならできるだけ低コストの商品を選ぶことが大切です。