次世代チップ「ブラックウェル」に対抗

エヌビディアのGPUに関しては電力消費が大きいことが課題との指摘もある。8月後半、AMDはAIチップ分野での競争力向上に向けた施策を発表し、エヌビディアにはない性能の実現を目指し始めたと考えられる。

まず、米ZTシステムズを49億ドル(約7200億円)で買収すると発表した。サーバー機器メーカーを買収し自社の次世代AIチップと結合する。11月ごろからエヌビディアが投入を予定している次世代チップの“ブラックウェル”への対抗姿勢は鮮明といえる。

台湾南部にAMDは研究開発センターを設置することも明らかにした。AMDはわが国の通信大手企業が進める“光電融合”に関する研究を進める模様だ。それは、AIのデータ転送速度を飛躍的に高め、電力消費問題解決の切り札になる可能性を秘める。

MI300Xに適合したメモリー(HBM)は、主に韓国のサムスン電子が供給している。エヌビディアのGPUに対応したHBMを供給するSKハイニックスを追い上げる米マイクロンも、AMDの仕様に応じてDRAMを積層する技術を開発している。

マイクロンは、米国だけでなく広島県にある旧エルピーダメモリの工場をHBMの主力生産拠点に育て、わが国の半導体製造装置メーカーやシリコンウエハーなどの部材メーカーとの供給網構築も目指している。GPU分野のエヌビディア、HBM市場ではSKハイニックスを猛追する企業は増加傾向だ。

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インテルやサムスンが注力する新技術「CXL」とは

米インテルや韓国のサムスン電子は、CXLと呼ばれる次世代のAIアクセラレーターの開発に取り組んでいる。CXLの役割は、複数の高速道路を超高速・大量の自動運転車両が走行し最も効率的に目的地に荷物を届けるイメージに似ている。

今のところ、CXLの国際規格は定まっていないが、既存のCPUとメモリーユニットなどをつなぎ、AIが処理するデータ転送のスピードと量の増加を同時に実現する、新しいハードウエアと考えるとよいだろう。

今のところ、研究開発で先行するのはサムスン電子のようだ。米インテルもCXL分野で成長を目指している。8月上旬、インテルはAI分野での遅れを挽回するため世界の従業員の15%程度(約1万5000人)の削減を発表した。