1日で40兆円の時価総額が蒸発した衝撃

今年5~7月期、エヌビディアの売上高、純利益は四半期ベースの過去最高を更新した。データセンター部門の売上高は前年同期の2.5倍、262億7200万ドル(3兆8400億円)に達し、売り上げ全体の約87%を占めた。マイクロソフトやオープンAIなどのIT先端企業が、エヌビディアのGPUを搭載したサーバーで生成AIを開発する構図は明確になった。5~7月期の決算内容は株式アナリストの予想も上回った。

ただ、前期の収益増加ペース(2~4月期、売上高は前年同期比3.6倍、純利益は7.3倍)はあまりに高かった。5~7月期の決算に対する投資家の期待も高かったようだ。決算発表後、3日の米株式市場で株価は一時9.5%下落し、2789億ドル(約40兆5460億円)が消失した。

AI業界で同社の一人勝ち状態が揺らぎ始めたととらえたとみられる。足許、AIデータセンター向けのGPUでエヌビディアは90%超のシェアを獲得しているが、シェアは徐々に低下する可能性もある。8月上旬の米株急落後、業績期待からエヌビディアの株価の反発も急速だった。8月28日の決算発表後、割高感と一人勝ちの変化への対応から同社株を手放す投資家は増えたとみられる。

ライバルのAMDはシェアを徐々に奪っている

エヌビディアの8~10月期の売上高予想は市場の予想を上回ったが、主要投資家の成長期待をつなぎとめるには十分ではなかったようだ。決算後のエヌビディア株の下落は、AIチップ分野の競争激化などを示唆しているかもしれない。

GPU分野での代表的な競争相手はAMDだろう。4~6月期、同社の純利益は前年同期比で9.8倍増加した。AMDはAIのトレーニングに使う“MI300X”(エヌビディアの“H100”や“H200”に対抗する製品)を投入し、シェアを徐々に奪った。ここ1カ月程度の間、AMDとエヌビディアの株価騰落率はほぼ同じだ。

AI分野の専門家の中には、AMDのMI300XはH200よりも使い勝手が良いと評価する者もいる。MI300Xはエヌビデイアの競合製品に比べ、大量のデータを迅速に処理する能力を持つようだ。AMDはMI300Xの価格を明らかにしていないが、H200よりも価格は抑えられているようだ。