重要さが分かっていても、勉強させようとしてしまう

――子どもがぼうっとしていると、不安になってしまう親御さんも多そうです。

子どもが一人で何もせずにいると、親御さんはなかには「ぼうっとしてるのはもったいないから、勉強をさせないと」などと思ってしまう人もいるでしょう。しかし、一人でぼんやりと妄想にふけっている時間にこそ、脳はよく育ちます。

私のところに相談に来た親御さんたちに「ぼうっとしているときにひらめきが生まれる」という話をすると、ほとんどの方が「たしかに、ぼうっとしているとアイデアが浮かぶことがあります!」などと共感してくれます。ところが、「お子さんにはぼうっとできる時間を与えましょう」という話をすると「いえ! もったいないので勉強させます!」と答える人がほとんどなのです。実感として、ぼうっとする時間の大切さを理解しているはずなのですが、子どもに対しては受験などの不安から「とにかく勉強させなくては」と考えてしまうようです。

ですから「そんなにぼうっとしていないで、宿題をやりなさい」なんて言うのはもってのほかです。ぼうっとする時間を持つことを「推奨」とまでは言いませんが、大切にしてあげてほしいですね。

スマホではなく、1冊の絵本に繰り返し触れさせる

――スマホやテレビなど、子どもの目に触れるメディアはたくさんありますが、脳の発達の観点から言えばどのようなものに触れさせたほうがいいのでしょうか。

最近のお子さんはスマホやタブレットなどで多くの動画を視聴していますが、私がオススメしたいのは「同じ絵本を繰り返し読み聞かせる」ことです。子どもの脳が発達する際、同じ刺激を繰り返し与えることにより、脳の神経回路が作られ、神経細胞をつなぐシナプスが強化されます。絵本に関しても、子どもが興味を示した1~2冊を繰り返し読むことで記憶が固着しやすくなります。

写真=iStock.com/Fly View Productions
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読み聞かせる親のほうが飽きてしまい、ほかの本を買い与えたくなってしまうかもしれませんが、子どもの脳の発達の観点で考えるなら、家に置く絵本の数を絞っていただきたいです。

――子どもが気に入った動画をタブレットで繰り返し見せても、絵本と同じ効果は得られないのでしょうか。

脳の発達においては、多種多様な刺激を入れることも重要です。ただ、動画は次から次へと情報が流れていく一過性の媒体なので、記憶を固着させるという意味においては、絵本と同じ効果は期待できません。

また、絵本は絵と文章が合体した媒体なので、言語発達を促すツールとしても有効です。うさぎが穴に入ったという描写があった場合は「うさぎさんは穴に入って何をしていたんだろうね」などと語りかけることで、子どもの想像力を養うこともできます。

いまのお子さんは、インターネットやデジタル機器がある環境で生まれ育つ「デジタルネイティブ」ですから、ある程度の年齢になれば、タブレットを使って自分から興味のあることを探索するようになります。そういった意味でも、スマホやタブレットで動画を見させるのではなく、親御さんは限られた絵本を繰り返し読み聞かせたほうがいいかもしれませんね。