急落時にやってはいけないこと

さて、話を戻します。山田さんに「どうすればいいんでしょうか」と聞かれた私は、こう話しました。

長く投資を続けていれば、規模の大小はあれ今回のような暴落は起こりうるけれども、その後、利益はいずれプラスに転じるから安心してほしい、と。むしろ、10年、20年の長期スパンで見た場合、今回のような暴落がないと利益は弾みません。株価が落ちているときこそ、安く多く買えるという構図もあります。実際、2008年のリーマンショックでは、一時は買っても下がり、買っても下がりとさすがに不安な日々でしたが、その後、値が戻りました。その上がり方は実にダイナミックで頼もしいもので、胸をなでおろしました。

私自身、20年あまり投資を続けていますが、コロナショックの時、30%強落ちました。それでも、元本と利益でいえば、利益の中での減りにとどまり、「元本割れ」のような痛手は負いませんでした。「長期・つみたて・分散」の原則を守っていれば、相当のことがない限り、元本を割るほど資産が減ることはないんです。

この話をすると、山田さんは少し安心した顔で「初心に戻って積立投資をベースに、個別株は焦って売らず、様子を見ながら判断していけばいいのですね」と一言。

その通り。むしろ焦って売るのは禁物です。改めて、私は山田さんに急落時にやってはいけない「NG行為」を伝えました(利益が一時9割減も、その後、株価が持ち直すとともに、山田さんの投資実績も改善しつつあります)。

1つは慌ててパニック的に売ってしまうこと、2つ目はSNSを見てしまうこと、3つ目は金融機関に相談に行くことです。SNSを見ると、「損失を少しでも減らすために売って損切したほうがいい」とか、「株を割安で買うなら今がチャンスだ」といった極端な意見が目に入り、影響を受けてしまいやすい。

同じく証券会社に相談しても、手元のファンドを売って違うものを買うことを勧められるケースも少なくない。急落している最中の株を買うのは「落ちてくるナイフをつかむ」ようなものだと言われます。うまく柄をつかめないと、刃をつかみ大ケガをしてしまいます。ましてや、動揺しているときは自分ではしっかりしているつもりでも、正確な判断ができないものです。不安を煽る恐れがあるものは一切見ないで、静観したほうがいいのです。