冷静に見えて実はパニックを起こしている

回避型の人は強く見えるかもしれません。自立能力が非常に高く、ほかの人など必要ないように思えます。

マリサ・G・フランコ『FRIENDSHIP 友情のためにすることは体にも心にもいい』(日経BP)

でも思い出してください。

人間は、社会的な生き物です。人は生まれながらに人を必要とするようにできており、誰のことも必要ないと主張するときは、何かが間違っているのです。

回避型の人は、争いごとが起きても冷静沈着に見えますが、体の内側はパニックになっており、神経系が興奮して血圧が急上昇していることが研究でわかっています(※6)。彼らが抑え込んでいる痛みは消えることはありません。内側では、ひどく傷ついているのです。

もっと正しい言い方をするなら、回避型の人は、私たちと同じように人を必要としているものの、依存してしまうのが怖いと思っています。

距離をおくようなふるまいは、人と親しくなると、あとで拒絶されて落胆させられるという恐れから、逆の行動を過度に取った結果なのです。

コロラド州デンバー在住の起業家で、かつて回避型だったチャーリーは、友情とは権力だと以前は思っていた、と語ります。一番気にしない人が勝ちなのです(回避型は決まってこう言います)。

友達に遊びにおいでと言われると、彼は断っていました。拒否することで、自分には力があり、主導権を握っていると感じられたからです。

彼が大人になったとき、不安な気持ちを隠していた自分に気づきました。

「人から拒絶されるのを、極度に恐れていたんです。恐れから、何も気にしないふりをしたり、誰かと友達になれる機会を軽視したりしていました。そうすれば、もし何かあっても、別にどうでもいいって言えるから」

こうした恐れや他人への不信のせいで、回避型の人は、人に手を借りたり貸したりするのも苦労します。そのため、助けが必要なときに人に頼る代わりに、心を閉ざして引きこもってしまいます。

この愛着スタイルは変わることはないのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。

そもそも、ほとんどの人は、単にひとつのタイプ、というわけではありません。回避型の傾向が大きい人も、状況や体調によっては不安定型に、またあるときは安定型になるときがあります。そして、成長とは、完全な安定を手に入れられなくても、なるべく安定できるよう努力することなのです。

※6 Lisa M. Diamond, Angela M. Hicks, and Kimberly Otter- Henderson, “Physiological Evidence for Repressive Coping among Avoidantly Attached Adults,” Journal of Social and Personal Relationships 23, no. 2 (2006): 205-29, https://doi.org/10.1177/0265407506062470 ;
Mario Mikulincer and Phillip R. Shaver, “The Attachment Behavioral System in Adulthood: Activation, Psychodynamics, and Interpersonal Processes,” in Advances in Experimental Social Psychology (Cambridge: Elsevier, 2003), 53-152. https://doi.org/10.1016/s0065-2601(03)01002-5.

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