回避型の人は人間関係を面倒なものと考える

陸軍士官だった50歳のジャレッドは、母親が15歳のときに生まれた子でした。

ジャレッドが覚えている一番古い記憶は、荷物をまとめて出ていく母親の姿です。自分より母と親しくなるのだろうと、母親がつきあっていた男性たちに嫉妬したのを覚えています。

祖父母に育てられたジャレッドは、自立を厳しく教え込まれました。人に頼ってはいけない。頼られてもいけない。人の家で出された紅茶をいただくのは大罪だ、と祖母に言われました。

ジャレッドはほとんどの回避型の人と同じように「人に近づきすぎたり頼ったりすると落胆することになる」と家族から学んだため、そういったことは一切しませんでした。

親友がひとりいましたが、それ以外はほとんどの人と距離を保っていました。

「友達は、人生を豊かにする存在ではなく頭痛の種である」という感覚を、常に家族から感じていました。あるとき、近所の人が大型ハンマーを借りに来たと祖父が文句を言っていたことがありました。祖父はもう10年もその工具に触れていないにもかかわらずです。

不機嫌な90歳の男
写真=iStock.com/RapidEye
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人間関係よりも仕事を優先する

回避型の人はジャレッドと同様に、人間関係を喜びや満足感をもたらしてくれるものではなく、プレッシャーや責任と受け取り、人を遠ざけます。

人がつながろうとすると、何か魂胆があるから近づくのだろうと決めてかかり、心を閉ざします。自分のことを多く語らないため、友達からはたいてい「謎めいた人」とか「正体不明」などと言われます。人を寄せつけないようにするため、回避型の人は仕事に没頭し、さらにアメリカの理想像に近づきます。

研究によると、回避型はほかの愛着スタイルと比べて、人間関係よりも仕事の方が自分の幸せに影響すると主張しがちです(※2)

ある心理学者のカップルセラピーに通っていた回避型の相談者は、交際相手についてこんなふうに言いました。

「彼女の場合、怒ると仕事が手につかなくなります。僕の場合は、怒ったら仕事せずにはいられません」

かつて回避型で、現在は恋愛コーチをしている長髪の中年男性フィリップ・ルイスは、同じ友達なら、ビジネスパートナーでもある友達の方がいいと思っていました。純粋なつながり以上の何かを提供してくれるため、その方が価値があると思ったのです。

とはいえ、回避型の人が人との距離を保つために使う方法は、仕事だけではありません。友達との間に、厳格な境界線をつくります。

違うグループの友達を一緒にすることや、たとえば職場の友達を自宅での食事会に誘うような、つきあいの場を変えることには関心がありません。

ギラス博士はある記事の中で、こんなふうに書いています。

「回避型の人は、それぞれの友達にたったひとつ、あるいはほんのわずかな役割しか与えないことで、それぞれの友達への自分の依存度を下げている(※3)。これにより、信用や依存への不安を緩和できるかもしれないからだ」

※2 Hazan and Shaver, “Love and Work.”
※3 Gillath, Karantzas, and Selcuk, “A Net of Friends.”