「かんざしで耳掃除」だけは無理そう

今ふうはすてっぺんから寄りかかり 末一2
いじらせて見なとおへねへむすめいひ 天二梅2

自分からしなだれかかったり、挑発する積極的な女子も。「おへねへ」は「手に負えない」の意です。脱力感漂う語感です。

男性側も、言葉巧みに女子を説得しようとします。

いたひこたないとむすめをくどいて居 明三桜6
はらまないしかたがあるとくどく也 安四満2

痛くないから、避妊気をつけるから、と言いくるめるセリフは今と変わりません。

毛にさわる迄は地女むづかしい 天五花3

「地女」は素人女(遊女ではなく)の意味。素人女性は今も昔も人気です。

今するかするかとこわくはづかしい 天二桜3
はづかしさかくごのまえにわりこまれ 安六智6

そしてついに男子は本懐を遂げ、女子は処女喪失。

処女が非処女になった場合、どのような変化があるのでしょうか。現代で言われている都市伝説が、非処女は足首がきゅっと締まっているとか、鼻の頭を押した時先が割れたら非処女、黒目と白目の境目が青いと処女で青くないと非処女、など。乳首が黒ずむ、という説は江戸時代にもネタかと思うほどメジャーでした。

ませ娘歯よりも乳首を先へ染め 一二八47

というのは、黒くなりすぎです。それ以外にも、

生きものを喰って尻が平くなる 末三17
太棹を遣って娘の声変わり 一三五23

江戸時代の人の鋭い観察によると、処女が非処女になった時の変化は、「声が少ししわがれる」「ふっくらしていたお尻が平らになる」など。

初茸を喰ふと娘の声がさび 八九7

初茸を切ると刃物がさびる、という現象を、男性器と娘の声にかけている名句です。

一度性行為の気持ちよさを覚えてしまうと、病み付きになり、結果子どもができてしまうことも。

白状をむすめはうばにしてもらい 明二礼2
根をおして聞けば娘は泣くばかり 明四梅1
しかられて娘はくしのはをかぞへ 明四智4

思い詰めて家出してしまう女子もいました。

しんじつな娘へのこを追って出る 末三14

妊娠して思い悩む女子もいれば、子どもを堕胎したり、ビッチ系キャラと開き直って遊ぶ女子もいます。

あいきゃう娘そこからもここからも 安四義2

長屋の壁や便所などに、色娘の名前が落書きされることもありました。ネットの書き込み感覚でしょうか……。

雪隠に有る名のむすめすごいもの 安三仁3

ちょっと前まで、ヤンキーのかわいい子の名前が街のベンチとかに彫られたり、この風習は続いていた気がします。すっかりネットに代替わりしましたが……。

江戸時代、ビッチで名を馳せた娘さんは、それ相応の、芸者になったり隠居や僧侶のお妾におさまったり、色女としての人生をまっとうします。

御めかけに出たで近所のおだやかさ 安四海1

江戸時代の男女はナンパしたり、されたり、恋愛離れとは無縁の刺激的な青春を送っていたようです。もう少し、異性への許容範囲を広げてみたら? とご先祖様に言われているようですが、かんざしで耳掃除だけは無理そうです。

画像=iStock.com/duncan1890
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