なぜカンピロバクターが検出されても回収されないのか

――市販の鶏肉にカンピロバクターの汚染が多いことはわかりましたが、なぜ販売前に細菌検査をしないのでしょうか?

鶏は消化管にカンピロバクターを保菌しています。サルモネラ同様、生の鶏肉を検査するとカンピロバクターは高率で検出されます。

加熱調理なしで喫食する食品(総菜など)で腸管出血性大腸菌が検出されると食品衛生法違反とされ回収の対象になる場合がありますが、生の食肉の検査を実施してカンピロバクターやサルモネラが検出されても、市場から回収されることはありません。

カンピロバクター検査には少なくとも3~4日程度の日数が必要とされるため、実際には販売前に鶏肉の検査を実施しても検査結果が出るまでに消費期限を過ぎてしまいます。

私たちが実施している市販鶏肉の細菌検査は、販売されている鶏肉そのものの安全性の確認というよりは、適正な食品が流通・販売されているかどうかの抜き打ちチェックというイメージです。

カンピロバクター汚染をゼロにすることは不可能

――食品を生産・加工・販売する事業者にはHACCPが義務付けられたはずなのに、なぜまだカンピロバクターに汚染した鶏肉が流通しているのでしょうか?

先ほども申し上げましたが、鶏は消化管にカンピロバクターを保菌しており、食鳥処理の段階での汚染により、鶏肉のカンピロバクター汚染が拡大していると考えられています。そのエビデンスは図表2の通りです。

食鳥処理場において、食鳥の「盲腸便」ならびに「と体ふき取り液」から検出されるカンピロバクターの遺伝子型を調べたところ、2012年7月10日に処理された食鳥の「Ⅺ」鶏群は「盲腸便」がカンピロバクター陰性でした。

にもかかわらず、「と体ふき取り液」では、同日直前に処理された「X−1」鶏群の盲腸便からの「ジェジュニ A型」と「III−2」鶏群の盲腸便からの「ジェジュニ E型」が検出されており、明らかな二次汚染が起こっていました(2012年7月17日の「X−2」鶏群と「I−2」鶏群も同様)

小島正美、山﨑毅『食の安全の落とし穴』(女子栄養大学出版部)

食鳥処理場では次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌・消毒が実施されているものの、内臓を摘出する段階で食鳥肉の汚染を防ぐことは難しく、これらのカンピロバクター汚染をゼロにすることはほぼ不可能です。

――やはり消費者側が家庭での調理でカンピロバクター対策を講じることが必須のようですね。しかし、過去に鶏肉をしっかり加熱調理してサラダを付け合わせて食べたところ、カンピロバクターの食中毒になってしまいました。手洗いもきちんとしたのに、どこから汚染したのでしょうか?

学校給食でのケースと同様に、生の鶏肉を処理したまな板や包丁でサラダの具材を切ったり、生の鶏肉を触った手でサラダを盛り付けたり、鶏肉から出るドリップがサラダに混入した可能性があります。

こうした二次汚染がカンピロバクター食中毒の原因のひとつであり、調理過程における汚染対策は食中毒の予防にたいへん重要です。

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