非現実的になる男性の皇位継承者

男性の皇族自体、皇位継承者の3人と現在の天皇を含め4人しかいない。新たに男性の皇族が誕生するとしたら、悠仁親王が結婚し、男子をもうけたときに限られる。

果たして悠仁親王と結婚する女性は現れるのだろうか。それはかなりハードルが高いのではないか。

現在の皇后が、精神的に長く苦しんできたという事実もある。天皇になる皇族と結婚することは重大な決断を要するし、家族や親族は、それを簡単には許さないだろう。

なにしろ、「小室さん」をめぐる騒動があった。皇室とかかわれば、どれだけの誹謗ひぼう中傷を受けるか分からない。そう簡単に、悠仁親王の結婚相手が現れるとも思えない。結婚がかなったとしても、そこに男子が生まれる保障もまったくないのである。

華族制度廃止と近代意識がもたらした危機

実は、皇位継承が危ぶまれる事態が訪れるのは必然的なことである。近代の日本社会は、その方向に動いてきたからである。

最初は、岩倉具視が「万世一系」というとらえ方を打ち出したことで、それをもとに、旧皇室典範では、男子しか天皇になれないと定められ、併せて養子が禁止された。ここで女性天皇が封じられてしまったのだ。

戦後になると、華族制度が廃止された。これは、憲法第14条が社会的身分又は門地による差別を禁じたからである。華族が「皇室の藩塀はんぺい」と呼ばれたのは、皇族に対する結婚相手の供給源になっていたからで、側室も華族の子女だった。

また戦後は、旧皇族が皇籍を離脱し、皇族の数は一挙に減少した。新しい皇室典範では、皇位継承は嫡出の男子に限定され、庶子はそこから排除された。つまり、側室が認められなくなったのだ。

戦後は、復員という流れもあり、ベビーブームが訪れた。人口は増え続け、むしろ、それをいかに抑制するかが課題になった。その時代には、将来において深刻な少子化が起こるとは、誰も予想しなかった。

しかし、社会全体で考えれば、農家や商家といった家の重要性が低下し、家を継承していかなければならないという感覚自体が希薄になった。天皇家の存続が危うくなるのも、そうした社会の変化と関係する。