子どもに「ういてまて」と声をかけ続ける

それでは、どうしたらいいのでしょうか。砂浜海岸を例にとり、現実で考えましょう。

砂浜で親が慌てるのは、お子さんが浮き具などで海上に浮いて、沖に流されている状態のときです。すでに沈んでいて姿が見えなかったら「途方に暮れる」ばかりですから、沖に泳いでいくことはそうそうありませんし、まずは「砂浜のどこかで迷子になっているのではないか」と陸を探すことでしょう。

浮いているお子さんの姿を見つけたら、海岸から大きな声で「ういてまて」と叫び続けます。お子さんは「自分に気が付いてくれた」と少し安堵あんどしますし、浮くことに全力を尽くします。多くの小学校では、背浮きの時に「ういてまて」と声をかけ合って練習しているので、子どもはかけ声だけでどうしたら良いか判断できます。

そして119番通報をします。通報で通信員に「海に流されている」としっかり伝えてください。そのキーワードで、通報を受けた消防本部から、各都道府県にある消防防災航空隊の救助ヘリコプターの出動につないでくれます。通信員の「いま救助隊が向かいますので、待っていてください」の言葉をぜひ信じてほしいと思います。

子どもと一緒に「ういてまつ」

本当は、岸から「ういてまて」と叫び続けてほしいところです。でも、どうしてもお子さんのそばに行きたい衝動が抑えきれなかったら、浮き輪でも救命胴衣でもなんでもいいので、浮くものを身に着けて、膝下までの水深のところまで海に入ることもありえます。距離にして10メートルくらいはそばに近づけます。そして「ういてまて」と叫んでください。

それでも衝動が抑えきれずに深いところに入ってしまったら、浮き具でお子さんと一緒に浮いていましょう。考え方を「救助」から「ういてまて」に切り替え、お子さんと一緒に「ういてまつ」のです。そして一緒に岸に戻ることは諦めてください。

救助隊の到着を待っていてください。もし浮き具がなかったら、背浮きになって呼吸を確保してください。それが、家族全員が生還するための最後のよりどころです。

消防防災ヘリコプター、海上保安庁ヘリコプター、警察ヘリコプターのいずれかが先に到着すれば、つり上げ救助という方法で1人ずつ海面からつり上げてくれます。それまで救助隊の到着を待っていてください。しかし、頼みのヘリコプターも、海に入る前に119番通報しなければ来てくれません。