死が近づくにつれて不快感レベルが下がっていく傾向

しかし、どちらが楽かと聞かれたら、やはり何も食べず脱水して枯れたように死んでいくのが一番楽だと思います。

NHKスペシャル取材班による『老衰死――大切な身内の穏やかな最期のために』(講談社)には、2005年にオランダで行われた貴重な研究が記されています。

研究対象は、平均年齢85歳、178人の重度認知症患者です。人工的な水分・栄養補給を実施しないと決定した後、不快感のレベルがどのように変化していくかを測定し、亡くなるまで記録していきました。

和田秀樹『どうせ死ぬんだから』(SBクリエイティブ)

その結果、人工的な水分・栄養補給の実施を見送った後の生存期間が「2日以内」「5日以内」「9日以内」のいずれのグループでも、死が近づくにつれて不快感レベルが下がっていく傾向が見られた、といいます。

もっとも生存期間が長かった「42日以内」のグループでも、不快感レベルが低い状態のまま最期まで保たれていたことが明らかになっています。

食べることや飲むことをやめた後、何もしないで自然に任せるのが安らかな最期を実現する、ということが証明されたと言ってもいいでしょう。

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