本来、子どもの自立を促すためには18歳で別居すべきですし、自立して家を出ていくということを伝えて考えさせるべきでしょう。実際に我が家の2人の息子たちは中学生になる際に、18歳になったら大学に行くか、就職するかを本人たちに決めさせましたが、「どちらにしても高校を卒業したら家を出て一人暮らしをしなさい」と伝えました。一人暮らしをしても困らないように、洗濯や掃除などの家事を本格的にやらせました。大学の学費や生活費などは必要ですが、一人で暮らす力を養うことも必要だと感じています。
仮に30代から子育てを初めても、子どもが成人する18年後、本人はまだ50代。人生100年時代ですからまだ折り返し地点です。しっかりと子離れ・親離れができればその後の自分の時間には余裕があるはずです。
親が自分自身の人生を生きるためにも、早い段階から子ども自身に社会性を持ってもらうことが重要です。社会的な活動ができることで、夢や理想の生き方を自分で見つけられるようになり、自主的に動けるようになります。冒頭でお伝えしたように、親からだけではなく、いろいろな人の愛情や豊かさを享受し、多くの価値観に触れることが社会性の構築には大切です。社会性があれば仮に18歳でスパッと家を出なくとも、子育ての不安は多少なりとも軽減できるはずです。時代や社会に合わせて、子育てもアップデートが必要なのは言うまでもありません。
親が自立していなければ子の独立はありえない
私がいつも親御さんに伝えるのは、「学び続けてください」ということ。子どもに勉強しろと言うのと同時に自分も学ぶ必要があります。親が学び続ける姿を見ることで、子どもは「学ぶ」ということを生活環境で習得しますし、リスペクトの精神も育めます。現在の仕事のことはもちろん、目指すキャリアやセカンドライフに向けて学ぶことは、子どもの何よりの勉強する動機になるはずですし、もちろん親御さん本人の糧にもなります。
20年ほど前に「リビングに子どもの勉強部屋をつくるのがおすすめ」とハウジングメーカーの間で流行したことをご存じでしょうか。お母さんが台所に立って、子どもはリビングで勉強している。本人は勉強に集中できないと思いきや、意外にも精神的には安定した状態で勉強できるそうです。このとき、親もリビングで本を読むなどして学ぶ姿を見せるといいでしょう。
つまり、家族同士で学ぶ姿を見せ合うことで、自然と学ぶ親の背中を見せられるんです。疲れたら「ちょっとおやつ食べようか」と自然に会話も生まれますからね。親子の会話も子どもが成長するうえで不可欠なものなので、そうした意味でも顔を合わせて会話する機会をつくることは大切です。
子どもとのコミュニケーションにおいて試してほしいのは、聞き出すのではなく、本人主導で話させること。私の息子が小学生のころ、学校生活や友達関係が気になるあまり、私は質問ばかりを投げかけていました。すると子どもから「母さんと話してると、尋問されてるみたいだよ」と言われてしまいました。たしかに、質問ばかりされると大人でも自発的に話す気にはなれません。それからは「ちょっと聞いてくれる?
今日こんなことがあってね……」と、子どもに向けて自分の話をすることを心がけると、「そういえば僕も……」と子どもが自ら話してくれるようになっていったので、親御さんが子どもに話を聞いてもらうことが親子間のコミュニケーションをスムーズにするコツのひとつだと思います。
同様に、「早くしなさい」と子どもを急かしたり、行動を強要する行為も避けたほうがいいでしょう。子どもにとっては嫌な感情だけが残り、メリットは大きくありません。
親も価値観をアップデートし続けること、対話の機会を設けること、自立について子どもと一緒に考えること。これらを意識すると、子育てに関する不安は軽減されると思います。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年8月16日号)の一部を再編集したものです。