我慢をしていると犯行はどんどんエスカレート

被害女性の調書を検察官が読み上げた。

調書「出産して仕事に復帰……子どもを預け、○○快速に乗らなければ……時間の関係で女性専用車両に乗れないこともあり……」

朝、あわただしく子どもを保育所などに預け、決まった時刻に同じ電車に乗る、そこに被告人は目を付けたわけだ。

調書「狙われるようになり……何とか顔を見たところ、同じ犯人と気づきました……週に2~3回……我慢していると手口がエスカレート……さらに下着の中にまで手を入れてきて……場合によっては私の膣の中に指を入れることも10回弱……乳房も4~5回……」

○○線の電車内にとどまらず、乗り換えた先の△△線まで追いかけてくるようになった。ついに被害女性は警察に相談。現場を押さえて逮捕するため、複数の警察官といっしょに電車に乗った。が、被告人は敏感に気づいたようで犯行に及ばなかった。半年後、もう大丈夫と思ったか被告人は痴漢行為を再開。被害女性はまた警察官に相談した。

被告人は、まずは被害女性の脇腹を触った。それからズボンと下着の中へ手を入れ、下腹部へ手を伸ばした。被害女性が被告人の腕をがしっとつかみ、いっしょに乗車していた警察官が現行犯逮捕!

写真=iStock.com/jjlim80
※写真はイメージです

被害女性と「結婚したいなって思って」

なぜそこまで1人の女性を付け狙ったのか。被告人はこう述べた。

被告人「自分でも、途中から(被害女性を)気に入ってしまって……最初は触れて、そのとき、うつむいて恥ずかしそうにしてて、そういう優しいところにつけ込んだ犯行です……自分勝手なんですけど……相手がおとなしい……(自分を)気に入ってくれてるんだと……」

そのあとの被告人の供述に、私は度肝を抜かれた。

被告人「(被害女性を)すごく気に入って、結婚したいなって思って……」

痴漢男と誰が結婚するんだ! とは痴漢男は考えない。そもそも女性の嫌悪感や痛みに対し想像力が欠けている。人格のある人間として女性を見ない。自らの性欲に都合よく、ねじ曲げて受けとめ、妄想をふくらませる。そのあたりが性犯罪者の特徴かなと私は見る。「認知の歪み」という言葉をよく聞く。確かにひどく歪んでいる。