スモールビジネスなら自分専用のニッチな市場を作れる

起業家はそもそもコンサルティングを依頼する必要などない。自分の胃袋に相談すれば、答えはすぐ出る。行動するのに何の稟議も会議もいらない。

スモールビジネスは、大企業のレーダーの下をかいくぐって自分専用のニッチな市場を作り上げられる。

P&Gにしてみれば、「たかが1000万ドルぽっちの小さい」市場のために自分の大きな図体を縮めて取り組む気になるはずがない。ぼくの会社スミス&ホーケンの今年の売上高は3000万ドルだ。

スモールビジネスとしてはまずまずの大きさかもしれないが、それでもまだ、大企業が自分も手を出してみようという気になる規模には達していない。

大企業なら何もかもわかっていて答えもすべてお見通し、という誤った考えがはびこっている。実のところはその正反対なのに。

いいかい、大企業はただ大きい、というだけの話なんだ。それを忘れてはいけない。非効率的、非生産的、非革新的だ。いたずらに検討と会議を重ねるだけで、大企業はスモールビジネスの足元にも及ばない。

ゼネラル・エレクトリック・クレジット社T・K・クィン前会長がかつてこう言った。

「いまある家電のどれ一つとして、大企業が生み出したものはない。洗濯機、電子レンジ、ドライヤー、アイロン、電灯、冷蔵庫、ラジオ、トースター、換気扇、電気座布団、電気カミソリ、芝刈り機、冷凍庫、エアコン、電気掃除機、皿洗い機、ホットプレート」

大企業内起業ブームに隠れて根っこにある「遅さ」

エリュウホンのボストンの第一号店にふらりと立ち寄ってみた。会社は急速に成長まっしぐらの時期だ。

某スーパーマーケットチェーンのお偉いさんたちが四人、店の床面積を測っていた。キャッシュレジスターの中身も見て、ノートにつけていた。

写真=iStock.com/Nodar Chernishev
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要するに、床面積あたりの売上を出したいようだ。実はうちの店、食品業界では驚異的な金額を叩き出していた。お偉いさん直々に、わざわざお運びいただき、ご苦労さまです。

さる大手シリアルメーカーはわが社の関係会社の名前を広告スローガンに添え、自社のコーンフレークの市場地位を足固めしようとした。

別のシリアルメーカーはぼくたちのロゴとパッケージ・デザインを借用し、ろくに挨拶もしなかった。大企業のやることなんて、しょせんこんなものだ。

組織における宿命的な体質は、「遅さ」。逃れられないほど体質化してしまっている。

昨今、企業内起業家精神をもてはやすのが流行りだ。これは現在の大企業のビジネスを再構築し、活性化するものとされているが、大組織の根っこにある「遅さ」を忘れている。

起業家精神は何よりもまず、静的に、止まった状況に変化を生み出す。変化に乏しく、「止まった」状況は、政府、大企業、教育機関など、いわゆる大きな組織に多く見られる。