製品やサービスの「違い」をいかに創造するか

グレゴリー・ベイトソンはかつて、情報を構成する主要な要素を「違いを作る違い」と定義した。

商品を、物質的なモノではなく、含有する情報量が重視される経済においては、製品やサービスを製造したり顧客の元に届けたりするのに、いかにして「違い」を創造できるかが成功への鍵となる。

この傾向はスモールビジネスにとって有利だ。少なくとも、機敏で、かゆいところに手が届き、市場の声に耳を傾けて即座に対応できるビジネスが競争優位に立つことは間違いない。

起業家はフットワークが軽いので、よりたやすく高度に情報化された製品を生み出すことができる。この情報が品質そのものなのだ。スモールビジネスは素早く考え、高速で変わることができる。

社内コミュニケーションも良好だ。おかげで、自社の製品・サービスを、より小さなターゲット市場に向けて仕立てることができる。

ビジネスをやるからにはお金を儲けなければならないが、何より優先するべきなのは、人が「欲しい」と思う製品・サービスを提供することだ。想像力と創造性が、これまで工業化社会で定石の「競合相手を打ちのめす攻撃性」よりも必要性を増している。

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情報化社会相手へのギアチェンジはゼニカネで解決できない

大企業は自らのビジネス体質を、マス・マーケット相手から、情報化社会相手へとギアチェンジするのに遅れを取った。理由は、ギアチェンジに必要なものを「買う」ことができなかったからである。お得意の金でカタをつけることができなかったのだ。

マス・マーケット相手の製品・サービスの場合は、要素分解し、一つひとつを単位あたりのコストへと数量化できた。このやり方は大企業の風土にマッチした。

しかし、企業目標が、情報を重視し、社員がデザイン・マインドにあふれ、より良い製品作りに努力を惜しまず、環境への配慮もするという方向にギアチェンジすると、社員の経営への積極的な参加やアイデアによる貢献が求められる。

こうなると工場、機械、ライセンスといったもののときのように、ゼニカネで解決できるものではなくなるのだ。

数年前のことだ。さる大手シンクタンクに勤務する友人が、大手焼き菓子メーカーのコンサルティングをした。依頼内容は次のようなものだ。

「より軽く、健康的な食品、すなわち、塩分、油脂、砂糖、いずれも少なめという好みは一時的な流行か、それともほんものか」

ほんものです。数カ月後、友人は報告書でそう結論した。人々は本当により気持ち良い暮らしを求め、より長生きしたいと願っています。

報告を受けたくだんの会社は現在もまだこの新しく仕入れた知識をいかに商品化するかを検討中である。大企業だからこういう悠長な時間もお金もある。

のんびり会議をしている間にもキャッシュを稼ぎ出してくれる製品群や有名なブランドを持っているのだからいい気なものだ。