その点、党内に敵が少ないのが小泉氏だ。数々の選挙応援に出かけ、党内への貸しも少なくない。女性問題をさまざまに抱え、環境相時代に「今のままではいけないと思う。だからこそ日本は今のままではいけない」「約束は守るためにあるから、約束を守るために全力を尽くす」といった「小泉構文」を散発したことで、首相としての資質に疑問符が付いたが、国民的人気をなお維持している。
小泉氏は、総裁選に意欲を示していないが、7月5日の党川崎市連大会であいさつし、憲法改正問題を取り上げて「自主憲法制定が、自民党ができたルーツだ。憲法改正に反対の党員はいない。原点回帰し、約束を果たし、これからも応援しようと思ってもらえるように頑張っていく」と、保守層にアピールした。
総裁選には、「独立系」の高市氏も出馬を準備している。安倍氏の命日の7月8日に経済安全保障を扱った著書を出版したほか、各地で講演会も開いている。
「次は選挙対策内閣」なのだから
自民党は7月7日投票の都知事選でステルス支援した現職の小池百合子氏が3選を果たしたが、並行して行われた都議補選(9選挙区)で候補を擁立した8選挙区で2勝6敗と大敗した。総裁候補と目される茂木、石破、河野、高市、小泉の各氏らが次々と応援に入り、総力戦を展開しながら、低めの目標だった「4勝4敗」にも届かなかった。
政治資金問題の逆風が止まない状況に焦ったのか、茂木氏が7月12日公開のインターネット番組で、岸田首相の総裁再選出馬を牽制したと報じられた。総裁の在職期間に関して「5年では長過ぎる。目標設定をし、3年以内にこれをやり切ると約束して、『できないぐらいだったら、自分は続けない』という思いでやることだ」との考えを示したという。
次の総裁候補を問う報道各社世論調査で、自身の順位が低いことについては「しょうがない。名前順(50音順)だから、圧倒的に不利な立場にある。上位が多い石破氏は最初に出てくる」と、調査方法にクレームをつけた。
だが、50音順の問題だけではない。関係者によると、茂木氏が地方に講演に行く際、生花店に木札を頼むと、決まって「モテギというのはどういう字を書くのか」と聞かれるのだという。質問の順番に注文を付ける前に、知名度を上げる工夫が必要ではないのか。
今後の政治日程は、8月末までに総裁選日程が決まることから、8月中下旬に手を挙げる人、挙げない人、降りる人が出てきて、総裁選の構図が固まる。そして、従来とは異なる政治環境や政治力学で新総裁が9月に選出されることになるのだろう。何しろ「次は選挙対策内閣」(閣僚経験者)なのだから。