総裁選に向けては「自民党が変わった、もう一回期待したい、という雰囲気作りが大事だ。国民に刷新感を持ってもらえるかが大きな節目になる」との見解を示し、新たなリーダーが出てくるべきかというインタビュアーの問いには「そう思う」と明言した。誰を推すかは「まだ決めていない」とも述べた。

菅氏は「ポスト岸田」候補について、聞き手の求めで人物月旦にも応じた。

小泉氏については「(将来のリーダーとして)多くの人が認めているのではないか。改革意欲に富んでいる人だ」と評し、石破氏を「期待できる方だ。色々なことがあっても、主張を変えないところがいい」と持ち上げた。河野氏については「突破力を持っている。(首相になる)可能性はある」とし、加藤氏のことは「仕事をきちんとできる人だ。だから(菅内閣で)官房長官をお願いした」とコメントした。さらに、主流派にいながら、岸田首相と距離がある茂木氏についても「大変な状況の中で、党運営をしっかりやっている」となぜか褒めている。

これらの正否はともかく、岸田首相以外なら誰でもいい、自分にはこれだけのカードがある、と言わんばかりである。

サーフィン大会中の小泉首相とラーム・エマニュエル駐日米国大使(2024年7月6日)。
小泉進次郎氏とラーム・エマニュエル駐日米国大使。(写真=ラーム・エマニュエル駐日米国大使/PD US DOS/Wikimedia Commons

「仲間割れを演じる党は支持されない」

こうした菅氏の発言の背景にあるのが、内閣支持率の低迷に加え、「今解散したら自民党は200議席を割る」(党4役の1人)との情勢調査の数字が一部に出回り、首相批判が憚れることがなくなった党内の空気だろう。

6月16日に斎藤洋明衆院議員(麻生派、当選4回)が新潟県新発田市内の会合で「こういう状況に至った責任は誰かが取らなければならない」「次の総裁選において、真に党を改革できる総裁候補を応援したい」と、首相交代論に言及したのがきっかけだった。

6月22日に東国幹衆院議員(茂木派、当選1回)が北海道旭川市内の会合で「ゆめゆめ再選などと軽々しく口にせず、党に新しい扉を開く橋渡し役を狙ってもらいたい」と首相に不出馬を求め、翌23日には高鳥修一元農林水産副大臣(安倍派、衆院当選5回)が新潟県上越市内で記者団に「リーダーや大将は部下を守るため、責任を負うものだ」と述べ、首相退陣を促している。

この間、津島淳衆院議員(茂木派、当選4回)が20日、国会内で開かれた党代議士会で「本来、首相がこの場に来て、皆さんのさまざまな苦労をねぎらいたいという思いを発するべきだ」と首相を公然と突き上げていた。

田村憲久政調会長代行(岸田派)が、23日のフジテレビ番組で「責任をトップに押しつけ、仲間割れを演じる党は支持されない」と反論したが、他派への広がりに欠けている。