麻生氏からの支持を確約されていない

菅氏の発言を受け、岸田首相や麻生副総裁、「ポスト岸田」候補も動き始め、メディアもそれを追いかける。

岸田首相は6月25日夜、麻生氏と帝国ホテル内の鉄板焼き店で会食し、改正政治資金規正法の処理をめぐって深い溝ができた両氏の関係修復に努めた。首相は1週間前の18日夜も麻生氏とホテルオークラ内の日本料理店で会食したばかりだが、麻生氏に近い筋によると、「突っ込んだ話はしていない」という。

首相にとって、総裁再選を果たすには、唯一の派閥・麻生派(55人)を率いるだけでなく、茂木氏や河野氏の動向にも一定の影響力がある麻生氏からの支持は不可欠だが、その確約が未だに取れていないのが実情だ。

その間隙を縫うように、河野氏が翌26日夜、都内の日本料理店で麻生氏と会談し、総裁選対応をめぐって協議した。麻生氏は河野氏の出馬に否定的な考えを示したと伝えられている。河野氏は21年の総裁選に出馬し、1回目の投票で麻生氏が推した岸田首相と1票差の2位につけたが、決選投票で敗れている。

麻生氏には、今回の総裁選に臨んで岸田首相、茂木氏、上川氏という3枚のカードがあるが、首相に対して突き放さないまでも、力が入らなくなったとの見方が周辺にある。

岸田首相は総裁選に向け、解散したはずの岸田派幹部と会合を重ね、6月29日の山梨県入りを皮切りに地方行脚をスタートした。首脳外交でも、8月上旬までモンゴル・中央アジア訪問などの日程を入れている。だが、自ら打ち出した電気・ガス料金の追加軽減策も事前に党幹部にも担当の経産省にも伝えず、独善的な政権運営という印象は変わらない。

夜の国会議事堂
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「自主憲法制定が自民党のルーツだ」

菅氏も動く。7月1日夜、都内のホテルで石破氏、武田良太元総務相(二階派)と会食し、総裁選での連携を確認したとされる。菅氏はこれに先立つ6月19日夜、茂木氏とも都内のステーキ店で会談し、党内情勢をめぐって意見を交わしている。

菅氏の持っている総裁選のカードは「小石河連合」の石破、小泉、河野3氏と加藤氏の4枚ということになるのだろう。菅氏は河野、小泉両氏については、首相にしたい、と以前から支援を明言してきたが、石破氏についてはそれほどの思い入れがない。

石破氏は、実現可能性よりも正しいか否かという価値基準を優先し、憲法9条改正も戦力不保持の2項削除を主張、自衛隊明記の自民党案に反対する。閣僚だった省庁からも信頼されず、永田町で一時、石破派を率いたが、求心力を保てず、次々と議員が離れている。