ポイント④ 仕事仲介サイトで「動画の撮影・編集依頼」

第四に、今回の東京都知事選挙では、インターネット上の仕事仲介サイトで、選挙期間中の動画の撮影・編集依頼などが発注されていたことも話題となった。

ただし、動画の編集依頼だけではやはり直ちに違法になるとは言えないだろう。仮にこの依頼が公職選挙法に抵触するとしたら、それは「運動員買収」との兼ね合いということになる。運動員買収とは公職選挙法で規定された有償スタッフ以外の人に金銭支払いが伴う形で選挙運動をさせることだ。この運動員買収は選挙事務所自体が直接実施しなくても第三者が行った場合も処罰の対象になる。

筆者の個人的見解では、動画の「撮影・編集」だけでは運動員買収とすることは難しく、「投稿」(特定候補者に対する投票の実質的な働きかけ)まで含めなければ何らかの違法性を見出すことは困難だと思う。ただし、このケースは過去に判例がないので、実際にはどのように判断されるかは未知数だ。

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また、これとは別に公職選挙法の動画関連の課題としては、候補者本人、事務所関係者、第三者が選挙運動に関する動画で広告収益等を得ることについての法整備も今後の課題となることだろう。

ポイント⑤ 事実上無意味化している「政治献金の上限規制」

第五に、今回の選挙期間中の一部報道を通じて、公職選挙法以外にも政治資金規正法上の課題も浮上した。個人からの政治献金上限は年間150万円と決まっている。ただし、候補者本人や政治団体がその政治献金を行った同一の個人から巨額の貸し付けを受けることは合法だ(少なくとも直ちに違法とは断言できない)。

実は政治家または政治団体に対する貸し付けが野放しとなっていることで、永田町界隈では政治献金の上限規制は事実上無意味化している。極端な話、大金持ちが友人知人の金持ちと合わせて候補者本人に巨額の貸し付けを行う形を取れば、政治資金規正法に何ら抵触することなく政治献金上限を超える資金が集まり、その貸付資金によって選挙運動のための費用の全てを賄うことが可能だ。

これは合法というよりは、単なる政治資金規正法の「穴」が塞がっていないだけであり、政治とカネの問題として何らかの規制が新しく検討されるべき課題である。