E・Fランク大学の卒業生も正社員化していった

超氷河期には、多くの大学で、就職先が1ランク下がる、という連鎖が起きた。

Sランク大学なら、Aランク大学並の就職先へ、Aランク大学は、Bランク大学並の就職先、Bランク大学はCランク大学並の……といった変動が起き、最終的に、Eランク・Fランク大学だと職にあぶれる学生が多くなっていく。

そんな玉突き連鎖が「超氷河期」の就職メカニズムなのだ。

元々、Eランク・Fランク大学だと卒業後、大手就職者は少なく、地元の中堅・中小企業に入る学生が多い。こうした地元の中堅・中小企業だと、採用は新卒にこだわらないところが多い。というよりも、学生からの人気が低く、新卒募集だけでは枠が埋まらなかったり、そもそも新卒採用に力を入れず、縁故者の中途採用で賄っている企業も多い。

だから、卒後無業の人たちでも、応募すれば、採用に至るケースは多い。

氷河期にEランク・Fランク大学卒で職にあぶれた人たちは、卒後、そんな中堅・中小企業に緩やかに吸収されていった。そうして正社員化していく。

その様子を、就業構造基本統計調査から見ていくことにしよう。

図表4は、就業構造基本統計調査から作成したものとなる。

2000年に大学を卒業した人が、初職で正社員となるまでにかかった期間を表している(現在無業、現在有業と2つの表があるため、それらの合計を示している)。

これを見ると、どのように正社員化していったのか、その足取りがよくわかる。

※図表=筆者作成

卒業後1~3年での正社員化が最も多い

正社員になるまでの期間が、卒業後1~3年4万9000人、卒業後3~5年1万4100人、5~10年1万6800人、10年以上1万2000人。合計で9万1900人が卒業後1年以上を経てから正社員となっている。

表中1年未満の正社員化が30万4500人いるが、この中には新卒時は無業で、その後1年以内に正社員になった人も含まれる。こうした数も加えれば、新卒無業者の10万人以上が正社員化しているだろう。ただし、ここでも女性は大いに不利で、正社員化したのは男性の半数程度にとどまる。

このような正社員化の積み上げが起き、結果、30代後半時点で男性の正社員比率が9割を超える状態に至る。女性の場合は、当時、出産や結婚退職が多く、一度家に入ったあとは、正社員に戻れず、非正規就労が年齢とともに増えていく。これは、氷河期とは何も関係ない「非正規化」だ。

確かに、氷河期世代で悲惨な生活を送るフリーターや引きこもり者は今でもいるだろう。ただ、それはどの年代にもあまねく存在する「就労困難者」でしかない。氷河期だけにスポットをあてず、広く、救いの手を伸べることこそ重要だろう。