創業20年で店舗を増やし続ける「博多一幸舎」

ラーメンチェーンがそれぞれしのぎを削るなか、創業から20年を経た博多一幸舎(運営:ウインズジャパンホールディングス)には勢いのあるチェーンが持つ特徴、さらに個性がある。同社は日本と海外を合わせて90店舗以上。年間売り上げは約40億円で、従業員は社員、アルバイトを合わせて500人以上。

特徴のひとつは複数のブランドを持ち、いずれも好調を維持していること。元祖泡系をうたった熟成追い炊き製法の博多一幸舎のほか、プロデュース店舗「幸ちゃんラーメン」「博多中華そば 幸ノ助」「源龍ラーメン」などがある。プロデュース店舗は長年勤めた従業員が自己資本ゼロで独立できる従業員支援型のそれだ。

ふたつ目の特徴は、国内店舗数(41店)よりも海外店舗(54店)のほうが多いこと。進出している国はインドネシア、タイ、シンガポール、マレーシア、中国、アメリカ、カナダ、ブラジルなど10カ国。インドネシアのようなイスラム教国でも、いくつかの店ではとんこつラーメンを出している。とんこつラーメンを食べるのはインドネシア人ではなく、同国に暮らす華僑とのこと。

3つ目の特徴は自家製麺を使っているだけでなく、外販もしていること。自家製麺を使用するチェーンはいくつかあるが、グループの製麺会社「製麺屋 慶史」は個人ラーメン店、中華料理店、居酒屋など350社に卸している。

福岡圏域には「替玉」という食べ方がある。1杯のラーメンで2つ、3つの麺を消費するので、製麺会社としては納入する麺の量が増える。製麺会社にとって福岡圏域は豊饒なマーケットなのである。

においの強いラーメン店は全国的に減っている

博多一幸舎の創業者、吉村幸助は福岡市生まれ。高校を出てから建築業界で働いていた。20歳から餃子専門店、とんこつラーメン店で修行し、2004年に独立。同社現会長の入沢元氏と博多一幸舎をオープン。創業からラーメンの味を開発する「大将」として同社を引っ張ってきた。

2020年からはプロデュース店舗「幸ちゃんラーメン」の全国展開を始めている。吉村は博多ラーメンに限らず、海外、全国のラーメン事情にも詳しい。

撮影=プレジデントオンライン編集部
博多一幸舎創業者でウインズジャパンホールディングス社長の吉村幸助氏

【吉村】今、博多に限らず、全国でにおいの強いとんこつラーメンは減っています。本格的な個性を求めるお客さんは多いのですが、においが強い店はなかなかやれないんです。

博多一幸舎は元祖泡系と名乗り、これまでずっと熟成とんこつスープでやってきました。ふたつの羽釜で豚の骨を煮込んで作るから、においは強いんです。

まず1つ目の羽釜で熟成スープを作り、2つ目の羽釜で若いスープを炊く。そうして熟成スープに、若いスープを継ぎ足しながら追いかけるのが「熟成追い炊き製法」です。羽釜で骨を炊く際、骨と骨を頻繁に動かして、釜のなかの対流を変え、空気を含ませるように撹拌かくはんすることで脂肪の泡(脂泡)が生まれる。だから泡系です。