「機嫌がいい」がないと癌のリスクが高くなる

人間がいまだに克服できない大きな病気は主に4つある。1つは「癌」、2つは「動脈硬化」、3つめは「感染症」、そして最後は「認知症」、この言葉を使っていいのかわからないがいわゆるボケだ。心のストレス状態は、これら4つすべてに悪く働いてしまうことがわかっている。

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定量化できない心のストレス状態と病気の発症を明確に関連づけて証明するのは簡単なことではないのだが、機嫌の悪いストレス状態はたとえば癌の免疫を司っているNK細胞の活性を低下させるといわれている。機嫌が悪くなればその瞬間に癌になるわけではないが、「機嫌がいい」がない人ほど長期的には癌のリスクが高くなるということだ。

また、いつもストレスを感じていると血管の内皮細胞の劣化が起こりやすいとの研究もある。それは何を意味するのかといえば、血管の内側の細胞を硬化させて動脈硬化を引き起こすことになる。それは心筋梗塞や脳梗塞につながるのだ。昨今、若年でも脳梗塞や心筋梗塞が生じるようになったのは年齢による動脈硬化だけでなく、さまざまなストレスが若い人にも襲いかかっているのではないかと推察される。

今でも人類は感染症に苦しんでいて、コロナウイルスに世界中が苦しんだことも記憶に新しい。この瞬間も、人とウイルス、人と細菌の戦いは続いている。そんな感染に負けないための人間の仕組みが「免疫」といわれるシステムだ。ストレス状態は、この免疫のシステムを弱体化させることも知られている。免疫にとっても不機嫌はあなどれないということだ。

ストレスホルモンは筋肉を減らして脂肪を増やす

そして、認知症。認知症の原因は、脳科学者によってさまざまな研究の末に明らかになってきている。いろいろな原因があるにせよ、機嫌の悪い状態は脳の機能を明らかに低下させる。たとえば、ストレスを感じているときには、判断や決断がしにくくなるだろう。また、理解力や記憶力も不機嫌なときは悪くなる。

ほかにも、創造性や想像性も「機嫌がいい」状態でなければ低下するという経験はないだろうか? 心の状態が脳のとくに認知機能に影響しているということは間違いない。認知症との関係を断言するのは時期尚早かもしれないが、いずれその関係も解明されるだろうと期待している。

ストレス状態は、それだけでほかにも身体の中に変化を生み出す。ストレスホルモンは筋肉を減らして脂肪を増やしていく。それは体重が増える「表肥満」や体重は増えずに体脂肪率が高くなる「隠れ肥満」、両方を惹起することになる。その身体変化は「インスリン抵抗性」といって、さまざまな身体の老化を進めていく。メタボリックシンドロームへと導いていくことにもなる。いわゆる生活習慣病の主たる原因の1つが機嫌の悪い状態、つまりはストレスを感じていることによるものなのだ。

もちろん、身体的なダメージだけでなく、自律神経の乱れやうつ病などの精神疾患についても「機嫌がいい」を失っている状態が長く続いたことが直接の引き金になっているのは間違いのない事実なのだ。「病は気から」を肝に銘じて、人生と人生のおよそ3分の1を占める仕事を少しでも「機嫌がいい」状態で遂行しようではないか。