放映権料頼み→独立採算へ

従来は、セ・リーグ各球団は圧倒的な人気を有する巨人との主催試合の「放映権料」が収益の柱になっていた。一方、巨人戦のないパ・リーグ各球団は、地域密着営業を展開していたが、それでも収支はぎりぎりで、親会社の赤字補填に頼っていたのが現状だ。

21世紀に入って巨人戦の視聴率は低迷、地上波の巨人戦の試合中継が激減し「巨人戦の視聴率」だのみのセのビジネスモデルは頓挫する。

また、パ・リーグでは、累積する赤字で近鉄バファローズが経営を投げ出し、2004年シーズン終了後にオリックス・ブルーウェーブとの合併が決まった。

NPB球団の経営者たちは、これを機会に2リーグ12球団の体制を1リーグ10球団にすると発表。これに猛反対したプロ野球選手会は、古田敦也選手会長(当時)以下、ストライキを敢行、世論もこれを支持して1リーグ化は沙汰やみとなり、新規に東北楽天イーグルスがパに参加し、2リーグ12球団存続となった。

この「球界再編」を経て、NPB球団は「独立採算」「財政健全化」へ向けて大きく舵を切った。

重要だったのは「チームと本拠地球場の一体化」だった。阪神タイガース(甲子園)、中日ドラゴンズ(バンテリンドーム)、ソフトバンクホークス(みずほPayPayドーム)など、グループ会社が球場を保有している球団では、球場を中心としたビジネス、マーケティングは容易だったが、球場使用料を支払っている球場は、その負担が大きい上に、球場内で自由なマーケティングができず、ビジネスモデルの変革は難しかった。

筆者撮影
2022年の札幌ドーム

1試合800万円という「球場使用料」

しかし2006年、千葉ロッテマリーンズは、本拠地の千葉マリンスタジアム(現ZOZOマリンスタジアム)の所有者である千葉市と「指定管理者」の契約を結ぶ。

これは公共施設の運営や管理を私企業などが請け負う仕組みで、小泉純一郎政権の「骨太の政策」の一環として導入された。千葉ロッテは、試合興行だけでなく場内の広告や物販、野球以外のイベント運営までを包括的に請け負う契約を結び、千葉マリンスタジアムを「自分たちの球場」として活用した。

この後、楽天イーグルスや横浜DeNAベイスターズなども、スキームは異なるが「包括的な指定管理者」として、本拠地球場で多角的なビジネスを展開するようになった。

アメリカでは行政が建物を建て、これをプロスポーツチームに全面的に運営委託して、賑わいの創出や税収増を生み出すビジネスモデルが一般化していた。ニューヨーク・ヤンキースは、ニューヨーク市が建設したヤンキースタジアムを本拠としてさまざまなビジネスを展開しているのだ。同様のビジネスモデルが日本でも可能になったと言うことになる。

地域密着で新たな顧客を増やしていた日本ハムとしても、同様の契約を札幌ドームと結びたい。それが難しくてもせめて1試合800万円という「球場使用料」を軽減して、収支を改善したい。そこで、日本ハムは札幌ドームと折衝を重ねた。