いまだネーミングライツ応募者は現れず
これ以降、札幌ドームは、なにかにつけて「それにひきかえ」と言われるようになる。折あしく、毎年大きな収益をもたらしたアイドルグループ「嵐」も活動を休止した。
そんな中で、札幌ドームは活用策を探るため、5万人規模を収容できる会場を大きな暗幕で仕切り、通常の半分ほどの2万人規模でイベントが開ける「新モード」を打ち出す。費用の10億円は札幌市が拠出したという。
しかし、この新モードは全く反響を呼ばず、2023年度の利用は「3日」にとどまった。
「一般企業なら、新しい展開をする前にしっかりしたマーケティング調査をすると思う。まさかお偉いさんの『思い付き』ではないと思うけど、どこまでプランを詰めたのかなあ」とは、スポーツビジネスの専門家の言葉だ。
さらに、今年1月には球場のネーミングライツ(命名権)の売却を発表した。しかしオリックスの「京セラドーム大阪」、千葉ロッテの「ZOZOマリンスタジアム」など、年間数億円規模のネーミングライツは、プロ野球チームあればこそだ。札幌ドームの年間2.5億円という価格は、いかにも割高で、応募者はないまま、募集は継続中だ。
そうした札幌ドームの「迷走」は、逐一メディアの報じるところとなった。
その挙句に、2023年度の純損益が、当初の見込みの倍以上に膨らむという発表である。
日本ハムファンだけでなく、多くの人々は「それ見たことか」と思ったのだ。
私が考える起死回生の策
ここまで苦境が続けば、一般企業であれば、社員のリストラ、給与のカット、事務所の移転などの対応が始まるはずである。
しかし第3セクターの株式会社札幌ドームは「剰余金が20億円余ある」として、少なくとも表面上は余裕があるかのように振舞っている。このあたりも、世間の神経を逆なでするのだろう。
実は札幌ドームの保全は、株式会社札幌ドームではなく、札幌市が担っている。2022年実績で、保全事業費として6.5億円を負担している。それを収支に含めれば、札幌ドームは日本ハムがいた時代から「実質赤字だった」との指摘もある。
札幌ドームは「災害時の大型避難施設」でもあり、行政が保全事業費を出すのは当然との見方もあるが、老朽化とともにその費用は増大するだろう。
地価も上昇し、北海道医療大学の移転も決まるなど、「街づくり」のレベルに及ぶ経済効果をもたらしている北広島市と日本ハムに対し、札幌市と札幌ドームは頼みの2030年札幌五輪も頓挫し、いい話が聞こえてこない。
「札幌ドーム」にとって大事なことは「意地を張るのをやめて、現実を見据える」ことだろう。このままいけば、「破綻」の道しかない。
筆者は以前から「夏の甲子園を札幌ドームに」と唱えている。
昨今の酷暑の中、屋外で行われる夏の甲子園では、選手の健康に及ぼすリスクが高まっている。猛暑は熱中症だけではなく、選手の集中力を奪うため、ケガのリスクも増える。もちろん観客や審判にもリスクがある。ならば、天候や日程変更の影響を受けない札幌ドームで行った方が高校球児の命と健康を守れる。
この際、札幌ドームは選手たちから不評のカーペットのような人工芝を本格的に入れ替えて、夏の時期だけ「札幌甲子園」と名称を改め、高校野球の殿堂にしてはどうか。筆者は本気で思っている。それくらいしないと、道はひらけない。
かつて大阪ドーム(現京セラドーム)も、第3セクターの運営会社が破綻して、オリックスグループが支援したのだ。「破綻」の声を聴く前に、民間も含めた「再建スキーム」を構築すべきだろう。現経営陣の「聡明さ」が求められる。