日本車の「ドル箱市場」が侵食されている

トランプ氏が再選した場合、日本にも右派ポピュリズム・自国優先主義の波は押し寄せてくると予想される。その時に日本はどのように振る舞えばいいのか。

政治的には、対中強硬路線にならざるを得ないだろう。トランプ氏が大統領になっても、アメリカと中国の対立は激化すると予想される。一方で経済的には、中国は日本にとって大きな市場であり、多くの製品のサプライチェーンに中国企業が組み込まれている。すぐに中国との取引をゼロにできる日本の大企業は少ないだろう。

もっともEVの場合は、BYDなど中国のEVも日本に徐々に入ってきているが、日本ではEV自体が欧州ほど売れていない。そのため市場として日本は重要視されていない。ただし、他のアジア市場はすでに中国のメーカーに席巻されている。

高い耐久性や悪路での走破性、燃費性能で、日本車が圧倒的な人気を得てきた東南アジアは、これまでは日本のメーカーにとって「ドル箱市場」であった。しかしここ数年は中国のEVが攻勢をかけてきている。

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「グレーター・アメリカ」vs.「グレーター・チャイナ」

タイでは長年、日本メーカーの自動車販売シェアが9割を超えていたが、2023年は78%と8割を切った。EVの伸びは顕著であり、中国のBYDは3万台を販売、シェアを4%に高めている。BYDはベトナムにも進出し、2024年半ばまでに50カ所のショールームを開設する計画を表明している。

またインドネシアでは、同国が世界最大規模の埋蔵量を誇るニッケルをEVのバッテリーに提供して関連産業の成長を促すべく、政府が支援している。2023年の新車販売シェアでは日本メーカーが9割を超えたが、中国の上汽通用五菱汽車が現地でのEV生産を始め、シェアを伸ばしている。

このように東南アジア市場での中国EVの躍進はすでに顕在化しており、日本の自動車メーカーは市場を奪われていく未来が予測される。

EVではアメリカ・欧州主要国・日本を中心とする「グレーター・アメリカ」と、中国・アジア・アフリカを中心とする「グレーター・チャイナ」の両陣営のすみ分けがより一層顕著なものとなるだろう。そうなれば、日本もアメリカのように関税を上げるなどの対応を迫られるかもしれない。

(構成=野上勇人)
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