年収が増えているのは「子あり世帯」だけ

過去記事〈日本は「親ガチャ」ではなく「出生地ガチャ」の国になる…「子供が増える8都市vs.消える39道府県」の残酷格差〉でも紹介しましたが、少子化によって児童のいる世帯の絶対数が激減している中、児童のいる世帯の平均年収だけはあがっているという傾向があります(国民生活基礎調査の長期推移より)。

家計調査から、2人以上の勤労世帯のうち、世帯主が34歳までの、いわゆる結婚や出産をするステージにある年齢世帯と、年齢全体の2人以上勤労世帯の推移を可処分所得で比較しても同様です。34歳までの、まさに子どもを産み育てる世代の可処分所得の伸び率のほうが高くなっています。

結婚・出産のボリュームゾーンが消失している

興味深いのは、1990年から2010年までの20年間は、どちらも仲良く同じ増減カーブを描いていたのですが、2012年~2015年あたりで、34歳以下家族世帯の伸び率が上回るようになり、2007年対比での2023年実績は、34歳以下世帯は1.28倍に対し、全体世帯は1.12倍と大きく差がつきました。

参考までに、2007年からの34歳以下単身男性の可処分所得の推移もプロットしてみると、こちらはもっとも低く、同2007年対比で1.06倍に過ぎません。つまり、34歳以下の可処分所得の低い層が独身のまま残っていると判断できます。

※2007年対比としたのは、単身世帯のデータが2007年以降となっているため。

さらに、そのグラフに34歳までの夫初婚数の推移を合わせてみると、2012年くらいまでは、可処分所得の増減にあわせて、夫初婚数も連動していることがわかります。要するに、可処分所得があがればその分結婚する男性が増えていたことを表します。

しかし、その相関が、2012年以降は負の相関となり、結婚して家族となった世帯の可処分所得があがればあがるほど、夫の初婚数は激減し始めました。

勘違いしないでいただきたいのは、34歳以下の家族世帯だけが突然高所得になったわけではなく、また、2012年以降「高所得でも結婚ができなくなった」わけでもありません。むしろ、逆で、高年収の男女しか結婚できなくなったのです。しかも、貧困層に限らず、かつて結婚・出産し、子育てをするボリュームゾーンであった中間層が結婚も出産もできなくなったことを意味しています。