変化した制作会社とテレビ局のパワーバランス

中京テレビは今回の事態に激怒し、極東電視台を「出入り禁止」したいところだろうが、そんなことはできないだろう。中京テレビの極東電視台への依存度はとても高いからだ。

極東電視台は、日テレ系で全国ネットされる「オモウマい店」、ローカル放送の「前略、大とくさん」「PS純金」「ぐっと」などのレギュラー番組のほか、帯ワイド「キャッチ!」、さらには「どうなの課」の後番組「こどもディレクター」も制作している。出入り禁止にして困るのは中京テレビのほうだ。

日テレでは、極東電視台は目玉番組「世界の果てまでイッテQ!」「有吉ゼミ」「月曜から夜ふかし」などを制作している。そこにアミューズという後ろ盾まであるのだから、そんな勢力に大きな口をきける勇気はいまのテレビ局にはない。

日テレと中京テレビにとってせめてもの慰みは、博多華丸・大吉両氏と森川葵氏が降りてくれたことだ。所属はそれぞれ吉本興業とスターダストであるから、事務所のほうが忖度したか、局が頼み込んだということだろう。

以上のような経緯を理解してもらったうえで、再度、今回のポイントを整理してみたい。

① なぜ番組の「他局移籍」は、これまで「タブー」だったのか
② 「他局移籍」が行われた理由、原因は何か
③ 今後のテレビ制作・テレビ局に与える影響

かつて「他局移籍」は例外だった

まず①「なぜ番組の『他局移籍』は、これまで『タブー』だったのか」を検証してゆきたい。実は「タブー」とは言いながらも、これまでも番組の「局間移籍」は存在した。

アニメは基本的に複数企業からの出資で映像制作をおこなう「製作委員会方式」を取っているため、局間移籍は比較的“障害なく”おこなわれるケースが多かった。例えば、「進撃の巨人」は毎日放送からNHKへ、「僕のヒーローアカデミア」は毎日放送から読売テレビへと移った。

バラエティにおいても、よく業界内で話題にあがる「東野・岡村の旅猿 プライベートでごめんなさい…」は当初はTBSの正月特番として放送されたが、2回目以降の放送は日テレに移った。だが、この場合は一度放送しただけであったこと、視聴率が振るわなかったので終了したという理由があったことが功を奏して問題になっていない。現在はシーズン25まで至っている。

このように、試験的に「パイロット版」を制作して放送して視聴者の反応を見たり、視聴率を計ったりすることはよくある。実際に私も前述のテレビ東京制作というテレ東系列の制作会社に出向していた際に、テレ東に「あまりにも予算がかかりすぎて無理」と判断された企画を、日テレに持ち込んで「モクスペ」という特番枠で実現化したことがある。

この場合も、テレ東は「やらない」と断ったので丸く収まった。だが、一度終了した番組が再度「特番」として復活することがよくあるため、終了した番組を他局に流用するのは考えづらい。しかも、「どうなの課」の製著(「製作著作」の略)」は中京テレビだ。「制作協力」の極東電視台には著作権はない。したがって、番組が終了しても何となくその番組の「著作権」は中京テレビに残っているというのがこれまでの暗黙の了解だった。

写真=iStock.com/flyingv43
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