「熱意」と「実績」で上・下・横を巻き込む

エネルギー本部 ガス事業部/上砂氏を囲むチームのメンバー。各分野における腕利きのプロフェッショナルが部署の垣根を越えて1つのプロジェクトに結集する姿は総合商社ならではだ。

そこにアメリカの開発会社から提案が飛び込む。ガス価の下落でパートナー企業の思惑が変わり、コアなエリアを含めた再検討の打診があったのだ。開発参画に向けて上砂氏がふたたび動き出した。しかし前回とは異なる点があった。今回はチームで動くことになったのだ。

「パートナーとの交渉のために日米間を往復していたので、東京でサポートしてくれるメンバーが必要でした。そこで、上、下、そして他部署も含めて積極的に力を借りることになったのです」

営業の専従メンバーは事務スタッフを含めた3人。そこに、経理、法務、コーポレートリスクなど、様々な角度から分析を行うプロフェッショナル4~5人が加わった。彼らはアメリカで動く上砂氏たちを東京からフォローする、いわば女房役。ここに日本初のシェールガス開発を実現するためのチームが誕生した。

「商社マンって、誰もやったことがない、大きな夢に取り組むことが大好きな人たちだと思うんです。だから、このプロジェクトチームにも、みんな期待を持って加わってくれたはず。ただ、その一方、シェールガスについて情報が不足していて不安も大きかったと思う。本当に現実味のあるプロジェクトなのかどうか、当初は半信半疑だったかもしれませんね」

メンバーの信頼を得るには何が必要だったのだろう。上砂氏がポイントかもしれないと挙げるのは「熱意」と「実績」だ。

「私が以前からシェールガスが面白いと盛んに言って動いていたことは、みんな知っていました。一度頓挫してからも一貫して動き続けていたから、本気であることは伝わっていたと思います。

それから、直前に北海油田の案件を成功させて実績をつくっていたことも大きかった。いくら斬新で夢のある計画を立てても、口だけなら誰もついてきてはくれない。実績のない人がいくら夢を語っても、どうしても説得力に欠けます。