「浮気は人類の種の発展に貢献した」と考える研究者もいる
社会的一夫一妻制と呼ばれるのは、生涯にパートナーが何人もいたとしても、正式なパートナーは常に複数ではなく、1人であることに変わりはないからである。こうしたあり方から、一部の研究者は浮気が人類の種の存続に貢献したのだろうと結論付けている。社会的忠誠と性的な不貞の組み合わせは種にとっては生産的なのだと。
これは、人間のすべての行動が種に利益をもたらすために進化したという意味ではない。また、人間の行動のすべてが進化の結果であるという意味でもない。偶発的な行動もあれば少数派もいるからだ。
人間は社会的一夫一妻制と性的非一夫一妻制を組み合わせて暮らしている。通常は1人のパートナーと暮らすが、浮気をする人もいる。浮気を決してしない人もいれば、ほとんどのパートナーシップで浮気をする人もいる。父親が“正式な”父親でない子供の数は0~11%で、中央値は1.7~3.3%と推定されている。鳥類では20%を超える。
これは生物学的見地から見て、人間が鳥類よりも一夫一妻制の種であると言えるのだろうか。それとも、人間の一夫一妻制の度合いが高いのは生物学的現象ではなく、浮気はいけないことだという規範の表れなのだろうか。
人間の睾丸は完全な一夫一妻制の種のオスよりも少し大きい
他の指標も見てみよう。1つは体に対する睾丸の大きさである。この比率は精子の生産速度を決定し、パートナーの数に関係してくる。人間の女性がある男性と性交したとする。例えば同じ日に次に性交する男性は前の男性に精子の生殖機能において勝る、あるいは取って代わる必要がある。人間の睾丸の大きさは完全な一夫一妻制の種のオスよりも比率としてはわずかに高い。だが、最も乱婚な種ほど高くはない。
次の生物学的指標は人間の“隠された”排卵である。女性に排卵があるかないかで男性の反応が微妙に異なるという研究結果がある。動物の一部の種では、排卵期に性器の色や大きさが変化するが、人間は比較的隠されていて、これは一夫一妻制にとって有利だと考えられている。排卵が目に見えにくければ、男性は次の排卵期までの1カ月、いつでも妊娠するだろうと気を抜かずに求愛とセックスをし続けなければならない。