「リュックでスーツが傷む」はどうすればいいか

ビジネスマンの多くは、バッグを選ぶ際にPCがどのように収納されるのかを気にしている。筆者が聞いた中では「PCや別途資料を持っていくことが増え、肩掛けタイプからリュックに買い替えました」(30代の男性)という人がいた。

「たとえば『ポーター リフト』のデイパック(4万9500円)は、カジュアルでもフォーマルでも使えるデザインですが、PC用の収納があります。バッグ類の生地の裏面にはPVC(ポリ塩化ビニール)加工を施しています。これは、バッグ形状を整えるだけでなく、水滴が中に染み込むことを防ぐ効果があります。ファスナー部分が斜めなのは、中身を出し入れしやすいようにした結果です」(名倉さん)

プレジデントオンライン編集部撮影
スーツ姿に馴染みやい四角いフォルムの『ポーター リフト』のデイパック。ファスナーをあえて斜めにしているのが特徴的だ。

リュックを背負うと、スーツ生地が傷む(摩耗する)のではないか。それが理由でスーツにリュックを認めない人もいる。

「スーツ素材にもよるので難しい問題です。スーツ生地の傷みを機にされる方は手提げバッグを好む傾向が今でも多い印象です。違う角度から私たちは、毎日使うバッグとしてお客さまにベストな提案をしています。

たとえば、『ポーター シングス』(バックパックは6万6000円)は背面にキュービックアイピケライトという素材を採用しています。吉田カバンが初めて鞄に採用した素材で、バッグと身体が接触する部分の圧迫を軽減させました。通気性も高いので夏場の不快感も和らげています」(同)

プレジデントオンライン編集部撮影
背中にくぼみを入れることで通気性を向上している『ピー・オー・ティー・アール/スコープ』(ソーシャルパック)。

吉田カバンのバッグは機能性も持ち味だが、世相を反映した一面もあるという。たとえば防水性の高い素材は、2000年代後半にゲリラ豪雨が社会問題となり、一段と開発が進んだ。

「われわれはお客さまの求めるものを用意したいと思っています。世相を反映してすぐにそれに合った商品づくりをしている……ばかりではありません。長年、人間の身体の構造や働き方などを考えて商品をつくっていますので、むしろ、過去に作っていた商品が、結果的に今の時勢にあったというケースの方が多いかと思います」(同)

プレジデントオンライン編集部撮影
リュック背面の下部にはスマホがちょうど入る場所が。ここだとリュックを背負っている状態でも取り出しやすい。『ポーター リフト』。

時代をうつす鑑としてのリュック

2021年には「POTR(ピー・オー・ティー・アール)」というブランドを発表した。ライフスタイルを意識して開発したブランドと聞く。

「POTR/SCOPE(スコープ)シリーズのソーシャルパック(税込み6万500円)も人気です。形はラウンド(丸い)タイプのシンプルなデザインで、リュックストラップ部分は、縫製により外側に厚みを持たせることで、肩から落ちにくく、肩への負担を軽減します。オン・オフどちらでも使い勝手がきき、リモートワークやワーケーションにも合ったバッグです」(名倉さん)

機能性で人気が定着した会社だが、近年は消費者目線をより意識した商品も増えた。

吉田カバンで人気のリュックを見ていると、それが「時代をうつす鑑」であることがよくわかる。もちろんフォーマルスーツや手提げの革バッグも一定の需要はあるが、社会情勢や生活習慣の変化により、服装や持ち物も変わっていくのだ。

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