バッタの脳を調べたくて『スターウォーズ』を見せた

バッタやカマキリなど、空を飛ぶ虫を虫とり網でつかまえるのは難しい。せまり来る敵や障害物をじょうずによけて飛ぶので、つかまえたと思っても、逃げられていることがよくある。

これらの虫が飛びながら障害物を避けられるのは、なぜか? 研究者たちは、その仕組みがわかれば、それを自動車に応用して衝突を予測できる車が作れるのではと考えた。

そこで、バッタが何かに衝突しそうになったときに、脳でどのようなことが起きているかについて研究を進めることにした。

研究のために使ったのは、映画『スターウォーズ』。この映画には、猛スピードで飛行体や敵がせまってくるシーンがたくさんあり、バッタが何かと衝突しそうなときの反応を調査するにはうってつけだった。

出所=『やってみた!研究 イグノーベル賞』(イラスト=すぎやまえみこ)

研究者たちは、100匹ほどのバッタに、センサーで脳からの信号を測りながら何かが急に近づいてくるシーンを見せた。

五十嵐杏南『やってみた!研究 イグノーベル賞』(東京書店)

すると、バッタが接近シーンのたびに興奮することがわかった。なかでも、悪役のダースベイダーが接近するシーンでは、特に脳細胞が活性化した。その後、研究者たちはバッタの脳細胞の仕組みを応用し、車の衝突回避システムの開発に貢献した。こうした知見は、監視に関する技術や、ゲームのプログラミングにも応用できる可能性があるという。

なお、研究に使う映画は、何かが自分にせまってくるシーンがあれば何の映画でも良かったが、研究者が好きだったため、スターウォーズが選ばれた。映像は、1秒間に何枚もの静止画(コマ)を連続して表示させることでできている。この研究では、コマごとに脳細胞の反応を分析したため、とても時間がかかる地道な作業だった。あまりにも大変だったため、スターウォーズが好きな研究者も、あきてしまったという。

バッタは、ダースベイダーが近づくシーンで脳細胞が活性化して興奮する

※2005年 イグノーベル賞平和賞 クレア・リンド(イギリスの研究者)ほか

▼ここがスゴイ‼
バッタの映画鑑賞が車の安全に役立つ研究だったとは! すごいスピードで何かがせまってくるシーンを見るのは、バッタにとっては怖い体験だったかもしれないですが、私たち人間にとっては、身を守ってくれるありがたい発見になりました。
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