かつて恐竜はどんなものを食べていたのだろうか。最近になって恐竜の排泄物の化石の分析が進んだことで、少しずつ食生活が解明されつつある。恐竜学者の田中康平氏の著書『最強の恐竜』(新潮新書)から一部を紹介する――。
あたり一帯に転がるコロコロした「ウンコ化石」
アメリカ・モンタナ州のバッドランドを歩いていると、卵殻化石はもちろんのこと、あたり一帯にコロコロした繭のような小さな岩が密集した地点があった。こういうコロコロした岩は踏むと滑って転びそうだからやっかいだ。実は、このコロコロした岩は全てウンコ化石なのだという。ウンコ化石と思われる岩は、地表を覆っている。おびただしい数だ。
正直、ほんまかいなと思った。ウンコと言われればそう見えるし、ただの泥の塊のようにも見える。ウンコ化石と言われた瞬間、急にその岩に価値があるような気がしてくる。どうして、それがウンコ化石と言えるのだろうか。
ウンコ化石は、正式にはコプロライト(coprolite)と言う。排泄される前の胃や腸の中の内容物はコロライト(cololite)と呼ばれる。尿化石はユーロライト(urolite)と言う。
これらは生物の体そのものの化石ではないため、体化石と区別して、生痕化石と呼ばれる。生痕化石にはほかに足跡化石や巣穴化石などが含まれる。恐竜のウンコ化石には、当時の糞虫が掘ったトンネル状の穴が見つかることがある。生痕化石の中に別の生痕化石が保存されるという、入れ子構造の化石だ。