形状、大きさ、内容物から“主”を絞り込む

ウンコ化石は、ウンコとは全く関係ない地層中の別の構造物と混同してしまう恐れがあるため、判定にはいくつかポイントがある。まず、形状である。恐竜のウンコには細長い形状や塊状、ベチャっと崩れた形など、「それっぽい形」が挙げられる。

だが、形状だけの判断は早計である。内容物に植物片や骨片などの有機物質が含まれていること、肉食動物のウンコであればリン酸塩の化学組成を示すこと、化石を埋める母岩と独立した化学組成や構造をしていることなどが基準となる。もちろん、これらすべてを満たす化石がいつも見つかるとは限らないから、判定はケースバイケースだ。

ウンコ化石研究には重大な問題がある。ウンコをした主が特定できないのだ。ウンコの内容物から、植物食性か肉食性かは分かる(場合がある)。ウンコの大きさから、ウンコをした個体の体の大きさをある程度絞り込むことはできる。ただし、それだけの証拠から犯人を追い込むのはかなり大変で、ウンコ化石が単体で見つかった場合、捜査は難航する。

体の化石と一緒に見つかる例は極めて珍しい

体化石と一緒にウンコ化石が見つかれば(状況証拠によって)ウンコの持ち主を特定することはできる。プシッタコサウルスというケラトプス類の恐竜では、マンガのようにペッタンコに潰れた化石が見つかっていて、軟組織まで綺麗に保存された標本が存在している。総排泄腔の跡まで確認でき、そのあたりには、ウンコとおぼしき物体がこびり付いていた。

また、クンバラサウルスというオーストラリアのアンキロサウルス類では、体化石とともにコロライトが見つかっている。この骨格標本は、過去にはミンミと呼ばれていたが、最近の研究で別属であることが分かっている。これまたマンガのようにペッタンコになった標本で、排泄前と思われる腸管内容物が体の表面にくっ付いていた。最後の晩餐の跡だ。

このような発見は極めて珍しい。「持ち主が誰か分からない問題」は卵化石や足跡化石にも共通しているが、卵の中に赤ちゃん骨格が残った化石や抱卵中の化石が見つかる卵化石よりも、さらに難易度が高いと言えるだろう。

モンゴル・ゴビ砂漠で化石を探す著者
写真=著者提供
モンゴル・ゴビ砂漠で化石を探す著者