最後はポジティブ思考に切り替える「転換」が必要
最初は少し気恥ずかしくて抵抗があるが、何度かやっているうちにおもしろくなる。誰かに初めて会ったときに理由もなく傷つくのは、自意識が刺激されたからかもしれない(たとえば、ずっと手にしたかったけれどあきらめたものを相手が持っている、自分より魅力にあふれている、自分が必死で否定してきたものを持っている、など)。
だとしたら、あなたの内面は自我を守るためにさまざまな対応の準備を始める(争うべきか、逃げるべきか、激高すべきか、など)。自意識解体はこの段階に進まないための努力なのだ。自意識から一歩離れて、自分を客観的に見られるようになる。
最後のステップ3は「転換」だ。探索と認知によって自分の感情を理解して認めた後は、それをポジティブ思考に切り替えなくてはならない。以上をまとめると次のようになる。
探索:自分の気持ちの変化をじっくり観察し、その感情がどこから出てきたのかを考える。
認知:気持ちの変化の理由を客観的にとらえ、現在の自分の境遇と比較して、認めるべき点は素直に認める。
転換:認知によって劣等感を解消し、これを変化のきっかけにするためのアクションプランを練る。
自意識を解体すれば意志決定力も高まる
探索、認知、転換はどんなふうに行うのか? 例を見ていこう。
【実践1】
探索:どうしてあの人の動画を見るとイヤな気分になって、うさんくさいと思ってしまうんだろう?
実践:あっ、自意識のせいで相手を否定しようとしていたみたいだ。でも、あの年齢であんな成功を収めたのなら、見習う点が必ずある。合わないところもあるかもしれないけど、とりあえず学ぶべきところは学ぼう。
転換:動画を見るのは不快だけど、それでも最後まで話を聞いてみよう。学ぶべき点は学んで、実践できることは試してみよう。
【実践2】
探索:女にモテるあいつを見ると、「女を食い物にする遊び人に決まってる」と思ってしまうのはなぜだろう。
実践:自意識のせいで相手に嫉妬して、劣等感が芽生えたんだな。異性に好かれる魅力はどこにあるのか? 観察してみよう。
転換:あんな奇抜な行動をとるなんて。ああいうところが魅力の秘密なんだな。一つ勉強になった。敵対視するんじゃなくて、友達として仲よく過ごしてみよう。
自意識解体はメンタルを強くするだけでなく、学習能力を大きく向上させ、意思決定力を高めてくれる。僕が最初に自意識解体について話した理由は簡単だ。これができなければ、これからお話しするどんなことも実現できないからだ。心にバリアを張っている人に、僕の話がまっすぐ届くはずがない。腕組みをして鼻で笑う準備をしている人に話を聞いてもらえるだろうか。新しいことを受け入れるには警戒心をやわらげる必要がある。自意識が強まっている状態ならなおさらだ。