「結婚したらしあわせになれるはず」と思い込んでいる

このように、同じ性別・年代でも未婚か既婚かで幸福度は大きく変わりますが、民間の幸福度調査でも性別年代別の区分まではあっても、配偶関係で区分をした調査は、私の知るところではほぼありません。

しかし、前述の結果通り、未婚と既婚とでこれだけ大きな差があるということは無視できないポイントだと思います。ましてや、生涯未婚人口が大幅に増え続けている現代においてはなおさらです。

とはいえ、これだけで短絡的に「結婚したほうが幸福度は高いのだ」ととらえることはできません。

人間が陥りやすい思考の罠に「フォーカシング・イリュージョン」というものがあります。これは、ノーベル経済学賞受賞者の心理学・行動経済学者であるダニエル・カーネマン(アメリカ)が提唱した言葉で、「何かの判断を行うときに、自分が注目する要因が持つ影響力を実際以上に重要視する傾向」と定義されています。

未婚より既婚の幸福度が高いからといって、「結婚したらしあわせになれるはず」という思い込みがそれにあたります。

幸福の因子として配偶関係の違いは確かに存在しますが、単純にそれだけが要因ではなく、他の因子としては、経済状態・健康状態・人間関係・仕事の充実などもあります。ここでは、そのうち「結婚意欲」と「お金・収入」について深掘りします。

「年収が高いほど幸福度が高い」という現実

未婚男女を対象に、年代別・年収別の幸福度の違いを見てみましょう。あわせて、結婚に対する前向き度・後ろ向き度の違いもクロス集計してみます。結婚前向きとは「結婚したい」と考えている層、後ろ向きは「結婚はまだ考えていない・したくない」と考えている層です。

結果は以下の通りです(図表2)。

まず、幸福度を見ると、男女ともにやはり年収が高いほど幸福度も高く、500万円以上がもっとも高くなります。同時に、20代の若者だけで見ると、女性は年収の多寡に関係なく、結婚前向き層の幸福度が高く、男性は年収が高く、かつ、結婚したいと思う20代の幸福度がダントツに高い傾向があります。