竹田くん三度リターンズ!

そして2024年5月、漫画のモデルとなった外科医は三度メディアに登場する。

〈私は長年この病院に勤めていますが、こんなにひどい医者は初めてです。彼の力量不足とデタラメな処置で、治るはずの患者さんが、命の危機にさらされることが度重なっています。今すぐ医者を辞めてほしい。多くのスタッフが、心の底からそう思っています〉

B病院を辞めた“竹田くん”は、救急医としてC病院へ転職していたのだが、このC病院のスタッフによる上記のような内部告発が週刊誌に掲載されたのだ(『週刊現代』2024年5月11日号)。

週刊誌にはC病院院長のインタビューも掲載されているが「患者さんへの謝罪の気持ちと、手術への熱意が感じられました」「ご指摘のミスは、医師なら誰でも判断に迷うようなもの」「竹田くんは今、一人前に成長しつつあります。われわれには彼を教育する使命があります」と一貫して彼を庇っており、雇い続ける方針のようである。この発言や報道が真実であれば、この病院には絶望するしかない。

写真=iStock.com/tomasworks
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ゼークトが警鐘した「無能な働き者」

ドイツの軍人ハンス・フォン・ゼークトが提唱したとされる「組織論」では、人材を「有能/無能」「働き者/怠け者」の指標を用いて4つに分類している(図表1)。

ゼークトによれば、最後の「無能な働き者」は「銃殺」という強い言葉で組織からの排除を奨めている。

医師で言えば、順に「有能な怠け者」タイプは「ワークライフバランス医師」として開業やフリーランスなどで働くケースが多い。「有能な働き者」タイプは「スーパードクター」として崇められるが、近年では減少の一途をたどっている。あるいは、古臭い日本の医療界を見限って海外転職するケースが目立つ。

「無能な怠け者」タイプは窓際医師として公立病院の閑職ポストなどで定年までしがみ付くパターンが目立つ。そして件の“竹田くん”のような「無能な働き者」タイプは、数は少なくても患者への被害が甚大である。

「無能な働き者」外科医で有名になったのは、この“竹田くん”だけではない。2014年に群馬大学医学部附属病院で同一外科医に腹腔鏡での肝臓手術を受けた患者8人が死亡した事件はよく知られている。

海外では、英国のブリストル王立小児病院事件が有名だ。1990年代に同病院での小児心臓手術で53人中29人が死亡したが、同地域には小児心臓手術の可能な病院が1カ所しかなく、公立病院のため競争原理も働かず、麻酔科医が内部告発することで社会に知られる問題となった。