患者がどんどん死ぬ『脳外科医 竹田くん』の“実在モデル”
医療マンガ『脳外科医 竹田くん』をご存じだろうか。
2023年にはてなブログでWeb連載された匿名作者による作品で、架空の病院である「赤池市民病院脳神経外科」を舞台にしている。
「あり得ない脳神経外科医 竹田くんの物語」という副題が示すように、「手術テクニックがド下手にもかかわらず、手術が大好きな脳外科医の竹田くん」が主人公で、患者は高確率で死亡もしくは後遺症に苦しむというブラックなストーリーである。
さらに怖いのは、マンガの内容が兵庫県赤穂市に実在するA病院で2019~20年に多発した医療事故に類似していると指摘されていることだ。描かれる手術や後遺症の詳しいエピソードも同病院関係者が協力しているとしか思えないほどリアルだからである。
SNS上では、「内容怖すぎ」、神の手ならぬ「死神の手」、人気医療マンガの『K2』をもじって「逆K2」などと評判になり、一般メディアでも紹介されるようになった。
こうして知る人ぞ知る実録作品として人気を博していたが、2023年7月、142話「霧」を公開した後、Web連載は休止した。「人々が完全に忘れる時、事件も完全に消える。このまま闇に葬られるのだろうか……」というフレーズで物語は終結したように思われていた。
ところが、半年後……。
大阪府の病院に転職するも5000万円訴訟
2024年2月、竹田くんのモデルと思われる外科医(以下、“竹田くん”)は再びメディアの注目を浴びた。A病院を2021年8月に依願退職後、救命救急医として転職した大阪府内のB病院で、「必要な透析治療を行わずに患者を死亡させた」として、遺族から慰謝料など約4960万円の損害賠償を求める民事訴訟を起こされたからである。
この“竹田くん”は、すでにA病院の患者から民事と刑事の両方で訴えられている一方、自身は専門医試験の受験を妨害されたなどとして、赤穂市と前院長などを相手取り、2023年10月に損害賠償請求訴訟を起こしている。
同じ医師である筆者としては「あんなに有名になったし、複数の訴訟を抱えた医師ならば訴訟に忙殺されるので、予防接種などで地味な職場で働いているだろう」と予想していたので、「救急医」というポジションで雇う病院が存在したことに驚かされた。