ジャーナリズムの信頼回復のために必要なこと

英オックスフォード大学ロイター・ジャーナリズム研究所の2019年世界調査では、「ニュースメディアは力を持つ人やビジネスを監視し検証している」と考える人が、日本は世界38の国と地域の中で最下位の17%だった。

この統計によるなら日本でジャーナリズムの信頼回復のため必要なのは、お行儀良さより攻めの姿勢のはずである。市民はそれを待っている。ジャーナリストの視線は常に市民に向いていなければならない。

ビル・コバッチ、トム・ローゼンスティール、澤康臣(訳)『ジャーナリストの条件 時代を超える10の原則』(新潮社)

では市民はというと、ジャーナリズムの掟の10番目にあるように「市民もまた、ニュースに関して権利と責任がある」。デジタル時代、市民はネットの多様な方法で報道への批評を行えるようになり、ニュースを良くする力もくだらなくする力もかつてなく大きい。民主主義において運営者であり「お客様」ではない市民はまた、ジャーナリズムに対しても「お客様」ではいられないのである。

著者たちのジャーナリズムに対する問題提起も、客として店に文句を付けるような振る舞いではない。著者たち自身ジャーナリストであり、現場第一線を離れてなおジャーナリズムを励まし強くしようと努力してきた人たちだ。

ジャーナリズムが困難に直面するこの時代、報道界に説教したり冷笑したりという外在的な姿勢ではなく、我がこととして問うているのである。そう考えてこの分厚い本を振り返るとき、著者たちが市民たちと共有しようとする熱をいよいよ感じてもらえるはずである。

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