ネット通販のため、日持ちするラスクに着目

原田と妻は商圏を広げることにした。近隣の客だけでなく遠くに住む客をつかむために、当時はまだ珍しかったネット通販をやることにしたのである。そして、日持ちがして、かつ夏の暑さにも耐えられる商品はないか模索した。思いついたのがラスクである。ラスクはパンの販売店にはつきものだ。製造した経験もある。彼らはさっそく開発に着手した。

原田はこんな説明をする。

「パン屋ではフランスパンが余ると処分せずにラスクにしていました。フランスパンをスライスし、溶かしバターを塗り、砂糖をつけて、もう1回焼く。それがラスクの製法です。

現在でも基本的な製法は同じです。ただ、従来からパン屋で作っていたラスクにはアイシングといって表面に白く固まった砂糖が載っていました。高級菓子というよりも、レジの横に置く副産物だったのです。袋に10個くらい入ったものが100円ちょっとだったと思います。

ただ、新商品として開発するとなるとそれまでのようなラスクではいけない。とにかく良い材料を使うことにしました。バターは日本で最高級のバターを使い、砂糖も厳選致しました。

撮影=プレジデントオンライン編集部
結婚前は建築関係の仕事をしていた原田社長。パンもお菓子も焼いたことがなかったが、いちから製法を学んだという

70代の義両親にも売り場に立ってもらい…

新しいラスクの名称はコンサルタントの意見を入れて「グーテ・デ・ロワ」とした。発売は2000年。しかし、すぐにヒット商品になったわけではない。

「お客さまに商品を知ってもらうのが課題でした。お中元、お歳暮の時期には近隣にチラシをまいて、その範囲をだんだん広げていきました。加えて、うちの父と母(義父と義母)は当時、70歳を超えていましたけれど、都内の百貨店で開かれる催事販売に1週間、出張してもらいました。

私は製造現場に張り付いて、妻は通販にかかりきりでしたから、老いた父と母に泊まりがけの出張販売を頼んだわけです。

ネット販売を始めた2000年はインターネットの黎明期で、うちはパソコン1台で始めました。私も妻もネットやパソコンに詳しいわけではなかったから、専門の方にご指導をいただきました。ネットだけでなく注文はファックスでもいただいていました。

ラスクを売り始めた当初は設備が追いつかなかったこともあり、学校給食のパンを作っている群馬パンセンターに委託しました。冬休み、春休み、夏休みの期間は学校給食が休みなので設備が空いている。それでラスクの委託製造を頼んだのです。あの頃は家族全員が製造、ネット販売、出張販売と頑張りました」