ひと粒で2度おいしい機能

このような装備差による戦いは熾烈で、その流れの中でスペーシアにも電動スライドアやアダクティブクルーズコントロールが採用されている。

以前、とあるメーカーの軽自動車開発担当者は、「ライバルが付けた装備は、自社でも追従しないと客離れにつながる」と危機感を語っていたことが印象的だった。

もちろん、装備の充実で、近年の軽乗用車の価格が上昇しているのも確か。とはいえ、価格重視の姿勢は変えていないため、開発コストの厳しさは以前よりも増している。そのため、「マルチユースフラップ」のような多機能性が求められるのだ。

スペーシアの「ひと粒で2度おいしい」装備は、ほかにもある。そのひとつが、助手席下の収納トレーだ。

画像提供=スズキ自動車
助手席下の収納トレー。まさかこんなところに収納があるなんて。

助手席座面を跳ね上げると内部に着脱可能なトレーがあり、小物類を収めることができるのだ。この座面跳ね上げ機能を活用し、シート座面を前倒しに折り畳むこともできる。そのため、長尺物収納時にも座面に直接荷物が触れることはない。さらにフロントシートのアームレストの内部にも収納が設けられている。これらの機能は、他のスズキ車も採用している。

他社モデルでも採用されているが、後席用格納式テーブルには、マルチサイズ対応ドリンクホルダー、スマートフォン&タブレット用スタンド機能、買い物袋用フックなどの複数の機能が備わる。

筆者撮影
後部座席のテーブルは大きめなので食事もラクにとれる。内蔵のドリンクホルダーは、500mLの紙パックにも対応。

N-BOXを意識した価格設定

さらに燃費性能の面では、それぞれのWLTCモード値を比較してみると、マイルドハイブリッド車のスペーシアが23.9~25.1km/Lなのに対し、NA車のN-BOX・スタンダード仕様は19.4~21.6km/L。エンジンに電動アシストを備えるスペーシアの方が優れている。

価格については、スペーシアの上位グレードに、電動パーキングブレーキやACC(アダクティブクルーズコントロール)などの先進安全運転支援機能まで備えた「ハイブリッドXセーフティパッケージ装着車」は177万1000円~、となっている。

興味深いのは、ほぼ同程度の装備を持つN-BOX「コンフォートパッケージ装着車」は178万2000円~となっている。その価格差は1万1000円。燃費の良さも考慮すれば、消費者はかなりお得に感じるだろう。

上記で紹介した機能を省いた簡素な仕様となるが、価格勝負となれば、スズキは強い。

基本的な先進安全運転支援機能を備えたスペーシアのエントリーグレード「ハイブリッドG」は153万100円~(2WD・CVT)だ。もちろん、装備差が大きいので単純比較はできないが、N-BOXの標準グレード(2WD・CVT)が164万8900円~と、軽スーパーハイトワゴンの買いやすさなら、スズキに軍配が上がる。

N-BOXに対し、スズキは少しでもお得感が感じられる価格設定にしているのは間違いない。明確な価格競争が垣間見られる。