一石二鳥の「マルチユースフラップ」

もちろん、登録車にあるようなオットマンほど凝った作りではない。その仕組みは、後席の先端部にスライドと角度調整機能を持たせたもの。

先端部を調整することで、ひざ裏やふくらはぎをサポート。楽な姿勢を可能としている。休憩時はオットマンモードでくつろぐことができ、走行中は足裏をサポートすることで、乗車姿勢の安定化を図ることができる。

また先端部を180度回転させると、後部座席の上においた荷物の落下を防ぐ荷物ストッパーになる優れものなのだ。

筆者撮影
荷物ストッパー兼オットマンという優れもの(スペーシア HYBRID G、スペーシア カスタム HYBRID GSを除く)

意外なことに、このぜいたくなオットマン機能は、本来の狙いとは異なる副産物だったと知り、また驚かされた。

スズキによれば、少人数での乗車時に後部座席を荷物置き場として活用するユーザーが多いという。ただブレーキや路面傾斜などで車両姿勢が変化すると、荷物が落下してしまうことが課題となっていた。

そこでシート先端部を立たせることで、荷物ストッパーとなるシート機能を考案。これにより、後部座席の上においた荷物を固定することに成功した。

開発部内では、新装備の追加がコストアップとなるため、ひとつの役目で終わらせるのはもったいないという声があった。そこでひねり出されたのが、オットマンなどの別の機能としての活用だったのだ。つまり実用性を高めた結果、ぜいたくな機能が追加されたのである。

筆者撮影
助手席前には大型のトレイがあり、大型のスマホも起きやすい。また近くにUSB充電口も。

軽自動車における熾烈な競争

軽スーパーハイトワゴンが手本とするミニバンでは、高級路線のトヨタの人気が高い。その最高潮といえば、アルファード/ヴァルファイアだ。その2列目シートは、やはりオットマン付きだ。

そして、ファミリーミニバンの主力であるノア/ヴォクシーにも、現行型より、オットマン付きキャプテンシートが採用されている(2列目シートが左右独立となる7人乗り仕様のみ)。

その流れを追うように、スペーシアがオットマン機能を持ち込んだことになる。私は、このことが軽スーパーハイトワゴンの競争の新たな火種となるかもしれないと考える。それは、軽自動車の場合、他社との装備差が人気を大きく左右する要因となるからだ。

軽自動車の購入者は、コスパ意識が非常に高く、仕様や装備などもしっかりと研究する。このため、セールスマンも、新車の特徴を伝えることよりも、顧客からの質問にしっかりと答えられるかが重要といわれるほどだ。

装備の重要性を示す一例としては、初登場時には高価だったLEDヘッドライトがある。ダイハツが2012年12月に、5代目ムーヴのマイナーチェンジで、「カスタム」に軽ガソリン車初のLEDヘッドライトを採用し、瞬く間に他社モデルにも広まった。

それ以降、搭載グレードは拡大し、今やN-BOX、スペーシア、タントの3車種については全車標準化。多くの軽乗用車にも採用されるようになった。その普及は、登録車よりも早かった印象さえある。