養育費の立て替えがないと、救われないひとり親世帯

第三に、日本の共同親権には、徴収や差し押さえは盛り込まれているが、ハンガリーのような「立て替え」はない。親権の8割を母親が持ち、そのうちの28%しか別居親から養育費を受け取っておらず、シングルマザーの平均年収が236万円だという事実を顧みると、養育費の立て替えがないと、母子世帯の困窮が改善されるのは難しいだろう。なぜなら、養育費を支払う能力のないとされる父や母は全体の約15%いるのだ。

こども家庭庁によると、そもそも養育費の取り決めをしているのは母子世帯で約47%、父子世帯で約28%しかいない。取り決めをしていない大きな理由は、母子世帯では「相手と関わりたくない」が34.5%と最も多く、次いで「相手に支払う意思がないと思った」が15.3%、「相手に支払う能力がないと思った」が14.7%となっている。

一方で、父子世帯では「自分の収入等で経済的に問題がない」が22.3%と最も多く、次いで「相手と関わりたくない」が19.8%、「相手に支払う能力がないと思った」が17.8%となっている。

撮影=此花わか
ハンガリー「Single Parents' Centre」の様子

同居親と別居親の収入を合算すると母子世帯の貧困が一層悪化する

第四に重要なのは、子どもの父母の年収が合算されて所得が計算されるとする共同親権の原案には、多くの反対の声が上がっていることだ。なぜなら、養育費が回収されなくても、父母の収入が合算されることにより、所得制限にひっかかり、公的な支援を受けられないひとり親が出てくるからだ。

ひとり親の半数が貧困に陥っている日本。その8割が女性で、平均年収が236万円。父子世帯の平均年収は496万円。このような男女が非対称な社会で、公的支援を受け取るときに父母の収入を合算するとなれば母子世帯の貧困が一層悪化するのは目に見えている。

ハンガリーも完璧な国ではなく、ひとり親世帯の貧困率は2015年の30.5%から2022年には18.3%まで下がっていたのに、2024年は40%に跳ね上がった(日本は50%)。しかし、子どもの養育費受領率が75%以上もあるハンガリーの包括的家族政策から学べることがあるはずだ。

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