養育費が3カ月滞納されたら「徴収・差し押さえ・立て替え」する政府

さらに特筆すべきは2022年にハンガリーがハンガリーが導入した2つの新しい法律だ。

まず一つ目は養育費の徴収、取り押さえ、そして「立て替え」だ。現在、ハンガリー政府は、別居親が3カ月分に当たる養育費を滞納すると、同居親が申し立てをすることができる。この3カ月分は“継続的な滞納”ではなく、累積した3カ月分の養育費額の不支払いだ。

また、ハンガリーではフルタイムで学校へ行っている子どもは、18歳以上の成人になっていたとしても、養育費を未成年と同様に支払わなければいけないという。

さらに、養育費不払いに対する申し立てに、調停や裁判所を経由する必要はない。同居親は政府のウェブサイトやNGOに載っている申し込みフォームをダウンロードし、他4つの証明書を用意して居住地の役所で申請する。すると、養育費が不払い親の給料から天引きされるが、不払い親が無職の場合は、貯金、不動産、株などの財産の差し押さえをする。

資産がない場合は、政府が月最大約2万1000円(5万200フォリント)まで立て替える。刑務所などの懲罰刑はないが、徴収・差し押さえには役所だけではなく、警察も厳しく関わるので、収入や財産があるのに養育費の支払いを避けるのは難しいそうだ。

「以前からハンガリーでは養育費の取り立てや財産の差し押さえは可能でしたが、別居親が家庭裁判所と警察に申し立てを行い、養育費の徴収に何カ月も、ときには何年もかかり、多くのひとり親が養育費をあきらめるはめになっていました。しかし、いまでは税金を徴収するように政府は養育費を徴収し、子どもが“いま”必要なお金が渡るようになりました。立て替えが始まってから2年しか経っていないので、立て替え率は分かりませんが、厳しく養育費を回収していると聞いています」(ノッジ氏)

ハンガリー「Single Parents' Centre」の様子
撮影=此花わか
ハンガリー「Single Parents' Centre」の様子
ハンガリー「Single Parents' Centre」の様子
撮影=此花わか
ハンガリー「Single Parents' Centre」の様子

ひとり親手当の最低支給額を2倍に増額!

二つ目の法律は「孤児支援(orphanage support)」だ。「孤児」には両親がいない子どもに加えて「ひとり親の子ども」も含まれる。この法律は、最低支給額をこれまでの2倍以上に増額した。

現在、ひとり親・両親がいない子どもたちが受け取る「最低支給額」はひとりにつき月約2万1000円(5000フォリント)だ。ちなみに、ハンガリーのひとり親手当に該当する日本の「児童扶養手当」の最低支給額は1万410円(最高4万4130円)である。

両国には、それぞれにさまざまな手当があり、税制も違うので単純に比較はできないが、ハンガリーの1人当たりの家計収入は日本の半分ほど(2023年:日本は約246万円、ハンガリーは約128万円)なのに、ひとり親への最低支給額は日本の2倍あるのだ。