父母の“合意”を認可するプロセスが抜け落ちている
先日、閣議決定された日本の共同親権の原案は曖昧な点が多く、当事者を不安に陥れており、この曖昧なまま導入されると、最低でも4つの困難が待ち受けているだろう。
第一に、共同親権は父母の協議による“合意”型をとっているので、父母の間に権力勾配がある限り、その合意が本当に公平なものか分からない。現行の単独親権や新しい共同親権でも、DVやモラハラを行っている親は親権を得られないはずだが、その配偶者は恐れや洗脳から、協議で共同親権に合意してしまう可能性がある。すると、元配偶者と子どもが引き続き虐待を受けてしまう恐れがある。しかも、日本ではDVや虐待を証明したり、DVや虐待から守ったりする法制度が整っていない。
ハンガリーの共同親権制度では、父母が決めた単独、あるいは共同親権やその他養育責任の取り決めを、“裁判所が認可”する形をとっており、子どもの希望も判断材料となる。日本の共同親権もこの「裁判所の認可」を盛り込み、同時に、DVや虐待の法制を早急に整備しなければいけない、という声は多い。
単独親権を行使する判断事項が曖昧すぎる
第二に、ハンガリーと日本両国とも、父母が合意に達しなければ、裁判所が親権を裁定することになっているが、単独親権を行使する判断事項が日本は、「DVや虐待からの避難など『急迫の事情』」と「監護及び教育に関する日常の行為」とされており、具体的な例示がない。
ハンガリーの共同親権の判断事項はより具体的で厳しい。例えば、父母が遠くに住み、子どもが父母の間を行ったり来たりをしなければいけないような「子どものライフスタイルのバランスがとれない」場合でも、裁判所は単独親権にするという。日本も、DVや虐待の証明・厳罰化の法律を整えるとともに、判断事項を子ども視点で明確にすべきだ。
さらに、子どもの生活に関する決断でいちいち父母が争わない養育の取り決めができる公平なシステムを作らなければいけない。そうでないと、共同親権制では膨大な量の調停・裁判が増えるだろう。