トイレは外出時、シャワーは半開でチョロチョロ流す

暖房も朝しか使わない。在宅しているときには部屋の中でもダウンジャケットを着て腰やお腹周りにはカイロを当てている。

「水道代を浮かすためにはトイレは外出しているときに済ますようにしています。ショッピングセンター、駅、図書館で1回してから帰るようにしているんです。お風呂(ユニットバス)も節約していて、シャワーを全開で使うなんてもったいなくてできないので半開でチョロチョロ流しています」

我ながらいじましいと思うけどお金がないのだから仕方ない。

「お金がないとお洒落もできません。シャンプーやリンスはドラッグストアでもらった試供品。リップクリームは100円ショップで買ったものです」

シーズンごとに新しい服を買うこともできなくなった。

「家着はリサイクル店でしか買わなくなりました。しかも特売品だけ。ブラウスとかネルシャツは4、500円ですから。このトレーナーは去年のクリスマスに救世軍のバザーで買ったのですが、なんと300円でした。今のわたしにはユニクロやしまむらでも高級品です」

以前は行きつけの美容院でカットとシャンプー、ブローをしていたが、この1年通っているのはカットのみ980円の格安店。

「おじさん、おじいさんたちに混じって順番待ちしていると浮いた感がありますね。女性で来店しているのは中年以上ばかりだし」

1円だって無駄使いしたくないから格好悪いなんて言っていられない。

倹約疲れと将来への不安

「でも、これは安いと思って買ったもので逆に損をすることもあります。100円ショップで下着代わりにTシャツを買ったのですが、洗濯したらもの凄く縮んでチビTみたいになっちゃったし、手洗い用の固形石鹸も溶けるのが早かった。靴のディスカウント店で買った白のデッキシューズは一度洗ったら全体的に黄ばんでしまいました」

100円ショップで食べ物を買うこともあるが、安さに釣られて買ったインスタントラーメンは揚げ油が合わなかったのか下痢をしてしまった。コンビニより安いから買ったお菓子がスーパーの方が20円安くて損をしたこともある。

「こんなことがあると倹約疲れを感じちゃいます」

同時に、何でこんなことやってるんだと自己嫌悪に陥ることもある。

「今のささやかな楽しみはアルバイトのお給料が出た日の夜にアメリカンドッグをつまみにして缶チューハイで一杯やること。一昨日も夜ドラの孤独のグルメを観ながら飲みました。主人公は健啖家で3000円ぐらいのお昼を食べていたけど、わたしの息抜きと自分へのご褒美は250円ほど。随分と差があるなあと思いました」

増田明利『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)

これから先のことに対しては不安が大きい。一番の心配はやはり金銭的なことで、早いところフルタイム、社会保険加入の仕事に就かないとまずいと焦っている。

「精神状態はいくらか回復したと思います。イライラすることはあまりなくなったし、眠れない日も減ってきていますから。早いところ社会復帰したいですね」

この先もずっとパチンコ屋の景品交換所で月11万円程度のアルバイトをやっているわけにはいかない。こんな貧乏生活では干上がってしまう。

「これ以上のブランクを作るのはまずいとも思うし」

正社員、直接雇用で新たな仕事を得たいが、それが難しいなら次善の策として派遣で働くのが現実的だと思う。

「この歳になって実家に戻り、生活の面倒をみてもらうわけにはいきませんから」

きちんと働いて生活の糧を得る。そんな当たり前のことがこんなに難しいとは思わなかった。

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