「国家は間違いを犯さないのですから!」
ドイツの企業はすでに長らく、複雑怪奇な官僚主義に苦しんでいる。しかも、現政権になってそれがますます酷くなり、外国投資にも悪影響を及ぼしているとして批判が絶えないが、それをハーベック氏は企業の責任にしたのだ。さらには、
そして、この後に衝撃的な言葉がくる。
この後、氏は「国家は間違いを犯さない」という不可解なテーゼを5回も繰り返した。しかも、その例として挙げたのが下記。
「経済状態は良い。数字が悪いだけだ」
間違いを犯さない国家が監督してくれるおかげで、私たちはレストランに行っても下痢をしないで済むと、ハーベック氏は言ったのだ。それも、幼稚園児にではなく、産業界で活躍しているエリートたちに向かって。
ハーベック氏には、無知を曝け出すような稚拙な発言が多い。例えば22年9月、ウクライナ戦争が始まって最初の冬を迎えようとしていた頃、ARD(公共第1テレビ)のトークショーで司会者が、「今冬に倒産の波が予想されるか?」と質問したのに対し、氏は「ノー」と断言し、「しかし、いくつかの業種が生産を止めることは想像できる」と真剣な面持ちで付け加えた。
偶然にもこの番組を見ていた私は耳を疑い、司会者も何度も問い直したが、氏は「生産を止めても、それは倒産ではない」という珍説を曲げることはなかった。ドイツ国の経済相が、よりによって経済の仕組みをよく理解していない。
それから1年半が過ぎ、現在の経済状況は前述の通り深刻だ。今年の2月、政府が過去2年続きのマイナス成長を報告した翌日、国会で野党議員にそれについての指摘を受けたハーベック氏は、「数字が悪いだけだ」と言った。つまり、経済状態は悪くない。議事堂内が図らずも大爆笑になった。「企業は生産を止めるが、倒産ではない」という発想と、合致しているといえば言える。