2:離党勧告後は一体どうなるのか
離党勧告された世耕氏と塩谷氏は当然のことながら、永田町の自民党本部への出入り、つまり部会や政調会への出席が不可能となり、政策決定に携わることもできなくなるばかりか、自らが支部長となっている政党支部を解散しなければならない。
このことは、自民党から各所属議員に支給される年1200万円ほどの政党助成金や企業からの寄付の窓口がなくなることを意味する。そして何よりも厳しいのは選挙である。自らの選挙区には自民党所属の国会議員が存在しなくなるゆえ、党本部が「自民党公認候補」を送り込んでくる可能性は濃厚だ。
特に参議院の選挙は3年に一回であり、自民党公認候補を立てなければ、自民党所属議員が3年間不在になることを意味するため、自民党が候補者を立てないということは想定しにくい。世耕氏は来年改選期を迎えるため、無所属のままとなれば、全県(和歌山県)の選挙戦では到底戦えない。支持母体である農協、建設、医療・福祉団体は、仮に新人であっても自民党候補に投票するからだ。同県における最近の参議院選挙の投票率は5割程度であり、組織戦がものを言う。
しかも、裏金づくりにかかわってきた派閥幹部という負の“実績”に加え、「秘書に任せていた」という言い逃れのような物言いなどから無党派層からの心証も悪いだろう。筆者の周りの現役議員を含む知人友人も「世耕さんってこれまでは政策通で発信力もあって、にこにこしていていい人そうと思っていたけれど秘書のせいにしまくる記者会見見て、あんな人だったの? とびっくりよ」と言っていた。そうしたリアクションは1人や2人でない。それだけこれまでの世耕氏の議員としてのイメージづくりは上手だったのだろう。今回の処分は、長年培ってきた信用や実績を一気に失墜させ、議員として“処刑”されるに等しい厳しい内容と言えるだろう。
そういう意味では、同じ安倍派幹部の西村康稔氏(兵庫・九区)はこれまでパワハラや女性問題などで週刊誌を賑わせ叩かれてきた分、逆にイメージダウンは少ないかもしれないという皮肉な結果となった。次の選挙で苦戦必至と見た世耕氏が衆議院への鞍替えを検討しているという報道もあり、その可能性は高いだろうが、こちらも当選のハードルは決して低くはないと言わざるを得ない。
塩谷氏も苦境に立たされている。仮に、次の衆議院選挙で自民党が公認候補を塩谷氏の選挙区(静岡・八区)に送り込まないとしても、戦況は厳しい。そもそも前回の衆議院選挙では選挙区では負けており、比例復活での当選だったからだ。当然、無党派層は塩谷氏に冷たいだろう。次回の選挙は党の比例名簿に掲載してもらえないため当選は前回以上に困難な状況と思われ、すでに赤信号状態である。