フィルムカメラを知らない世代に「現像」のたとえが通じない

ここまで、専門用語は身近にあるものにたとえるという話をしてきましたが、たとえも時代の変化に伴って、見直しをしていく必要があります。

深谷百合子『賢い人のとにかく伝わる説明100式』(かんき出版)

私が液晶パネルを製造する工場に勤めていたときのことです。

生産部門で新入社員研修を実施していた方から、「今まで使っていたたとえが通じなくなって、困った」という話を聞きました。液晶パネルの製造工程の中には、「露光」「現像」という工程があるのですが、それまでは、「露光」「現像」を説明するのにフィルムカメラをたとえに使っていたのだそうです。ところが、フィルムカメラを知らない世代が増えてきて、そのたとえが通用しなくなってしまったそうです。

実は、先ほど述べた「発電すると熱が発生する」ということを、「ペダルをこいで、自転車のライトを点灯させる」という経験にたとえる話も通用しなくなる可能性があります。充電式、乾電池式、ソーラー式など、ペダルをこがなくてもライトが点灯する自転車に乗る人が増えてくると、「ペダルをこいで自転車のライトを点灯させる」という体験を持つ人が減り、話が通用しなくなってくるのです。

時代とともにたとえを更新していく必要がある

いいたとえができると、「やった!」と嬉しくなります。しかし、残念ながら一度作って終わりではありません。時代が変化し、たとえに使っていた物や現象が、なくなってしまうこともあります。また、「ある年代以上の世代には通用するが、20代より下の世代には通用しない」ということもあります。相手がどの年代なのかによっても、使うたとえを変えていく必要があります。

さらには、日本人にしか通用しないたとえではなく、外国人にも通用するたとえが必要になることもあるでしょう。

たとえも、時代の変化や生活様式の変化などに合わせて、ゲーム感覚で楽しみながらバージョンアップさせていきましょう。

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